研究課題/領域番号 |
19H02406
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
香川 敬生 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (50450911)
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研究分担者 |
野口 竜也 鳥取大学, 工学研究科, 助教 (20379655)
池田 隆明 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (40443650)
盛川 仁 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (60273463)
吉見 雅行 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (00358417)
後藤 浩之 京都大学, 防災研究所, 准教授 (70452323)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地表地震断層 / 震源近傍域 / 強震動 |
研究実績の概要 |
過去の被害地震では,地表地震断層ごく近傍で断層変位による構造物被害が見られる場合に耐震性の低い建物が影響を受けていないなど地震動による被害が小さいと考えられる事例が散見されている。一方で,大きな震動被害は地表地震断層から少し離れた領域で生じているように思われる。これらの現象を追認し,その要因を震源断層の破壊,また断層帯周辺の地盤応答の両面から探るために既往被害地震を対象とした調査をおこなっている。地表地震断層を伴わない被害地震としては2016年鳥取県中部の地震,2018年島根県西部の地震,2018年北海道胆振東部地震の被災域,また地表地震断層を伴った地震としては2011年クライストチャーチ地震(ニュージーランド),2016年熊本地震,2016年カイコウラ地震(ニュージーランド) の強震動を解析し,1943年鳥取地震を含む地表断層周辺での調査を実施し,雑誌論文および口頭発表として研究発表をおこなった。1943年鳥取地震で出現した鹿野断層を跨いだ全長200mのS波浅層地震探査を実施し,地下構造を推定するとともに断層を通過した人工地震波群を得た。これらのデータ2020年度に解析し,学会等での結果発表を予定している。また,2011年クライストチャーチ地震(ニュージーランド)の際に生じた大加速度記録の要因について,2019年度には新型コロナウィルス感染拡大による渡航制限等の影響を受けたが,2020年度には国際共同研究として査読論文を公表する予定である(2020年度実施済)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外で発生した地表断層地震,潜在断層地震を対象として,特に地震動の増幅特性に影響する浅部地盤構造とその応答に着目して,微動探査を主とした観測,解析を実施した。対象としたのは,地表地震断層を伴わない被害地震として2016年鳥取県中部の地震,2018年島根県西部の地震,2018年北海道胆振東部地震,また地表地震断層を伴った地震として2016年熊本地震,2016年Kaikoura地震(New Zealand)および1943年鳥取地震である。被害を生じた場所では微動H/Vスペクトルに明瞭なピーク周期が見られることが多いが,地表地震断層周辺ではピークが明瞭とならない場合が多く,断層帯近傍の地盤震動特性に変化が生じていることが示唆された。 そこで,1943年鳥取地震で生じた鹿野断層を跨いで全長200mのS波浅層地震探査を実施した。得られた地下構造は常時微動のピーク周期と調和的であったが,横ずれ断層のため明瞭にその位置を確認することはできなかった。しかし,想定断層付近で波の乱れが確認された。断層帯を通過した多数の人工地震波群が得られたので,2020年度にその解析を実施する。を前者による構造物被害の要因を断層変位によるものと地震動によるものに分類し,被災住民への聞き取りを併せて,震源断層ごく近傍地震動の実態を把握する。 上記に加え,国内外で発生した地震の運動学的な断層破壊モデルの網羅的な調査,および動力学的な震源断層モデルについて,2019年6月および2020年1月に研究会を実施して議論をおこなった。2020年3月の海外打合せおよび研究会が新型コロナウィルス感染対策のため中止となったが,2020年度に繰り越しオンライン会議などを用いることで概ね所定の成果を得た。その他取り残した課題を含めて2020年度に検討を深める。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,国内外で発生した地表断層地震,潜在断層地震を対象として,震源破壊過程,地盤増幅の影響の観点から現地調査を含む検討をおこなう。あわせて,建物被害事例や被災体験を通じた地表地震断層周辺の震動の実体把握をおこなう。また,2019年度に得た断層帯を通過した波群の解析を進めるとともに,断層帯の強震時応答を検討するための断層破砕帯における試料の入手および試験,解析をおこなう。 これらの調査解析を通じて,地表地震断層ごく近傍で地震動が小さくなる要因について,震源,地盤応答の両面からのモデル化を進める。
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