研究課題/領域番号 |
19H02407
|
研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
矢島 啓 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 教授 (10283970)
|
研究分担者 |
川池 健司 京都大学, 防災研究所, 准教授 (10346934)
吉岡 有美 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 助教 (40753885)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 内水氾濫 / 気候変動 / 雨水貯留ポテンシャル / AI技術 |
研究実績の概要 |
本課題は中小都市の内水氾濫を対象としている。本年度は昨年度と同様に,松江市の内水氾濫計算および氾濫予測を行うための基本モジュールの構築として,次の4つの側面から 研究を実施した。 1) 斐伊川流域の流出計算:昨年度に構築した分布型流出モデルHydrological Simulation Program-Fortran(HSPF)を用いて,1986~1995年の10年間を対象に,宍道湖・中海流域を含む斐伊川全流域を対象にした流出モデルの検証を行った。特に計算に用いる地上雨量は,レーダー雨量データとの比較検討を行い,地上観測雨量に関する補正法に検討を加え,流出モデルの妥当性を確認した。また,気候変動を考慮した計算として,CMIP5の中で計算outputデータが揃っているACCESS, GFDL, MIROCの3モデルの2090-2099年を対象にした流出計算を行うとともに,単純に雨量を1.1倍,1.25倍と引き伸ばした流出計算も行った。 2) 中海・宍道湖の水位計算:昨年度構築した3-Dimensional coupled Hydrodynamic-Aquatic Ecosystem Model(AEM3D)を用いて,流出計算から得られた10年間の流量データを用いて,湖内の水位,水温,塩分についての比較計算を行い,湖沼計算モデルの妥当性を確認した。 3) 松江市街における内水氾濫計算:昨年度に構築したモデルで十分考慮されていなかった松江市街にある排水機場や水門の操作ルールを追加で収集し,モデルへの取り込み方法についての検討を行った。 4) AI技術を用いた内水氾濫予測:松江市内の下水道およおび河川の主要地点9箇所における水位計測を継続して行った。また,不足する市街地の雨量情報を補うために,独自に観測点を3カ所設けるとともに,一般には公開されていないデータの入手も行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度構築した斐伊川流域流出モデルの流出量に関して詳細な検証を行ったところ,計算に用いていた地上観測降水量を補正する必要があることが明らかとなった。そのため,新たにレーダー雨量データの収集を行い,地上観測雨量との比較検討を行ったため,流出モデルの完成に想定以上の時間を要した。ただし,最終的に完成した中海・宍道湖水位計算モデルについては,十分な精度があることを確認している。 年度当初の計画では,本年度は斐伊川流域流出モデル,中海・宍道湖水位計算モデル,松江市内水氾濫モデルの3モデルの結合まで予定していたが,上記の理由から,最初の2モデル(流出モデルと水位計算モデル)の結合までしたできなかった。よって,本研究課題はやや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
当初予定した研究成果を得るため,早期に内水氾濫モデルを含めた一連の連結モデルを完成させた上で,以下に示す3つの側面から研究を実施する予定である。 1) 中海・宍道湖の水位計算:得られた流出計算結果を利用し,将来の海水面の上昇量も考慮した,中海・宍道湖の3次元湖沼モデルの計算を行い,気候変動および海面上昇に伴う湖内の水位上昇量と水位変化の評価を行う。 2) 松江市街における内水氾濫計算:早期に,新たに収集したデータを組み入れた松江市橋北部を対象にした内水氾濫モデルを完成させる。その上で,上記の計算で得られた宍道湖・中海の水位上昇量を考慮した内水氾濫計算を行い,気候変動と海面上昇が内水氾濫に与える影響を評価する。さらに,流域内の小規模雨水貯留施設やため池による内水氾濫低減効果を評価する。 3) AI技術を用いた内水氾濫予測:継続して計測中の松江市内9箇所における下水道および河川水位の計測,および3箇所の市街地雨量の計測データと内水氾濫結果から得られたデータをもとに,AI技術を用いた内水氾濫予測手法の検討する。
|