研究課題/領域番号 |
19H02409
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
馬場 俊孝 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (90359191)
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研究分担者 |
高川 智博 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, グループ長 (30451785)
齊藤 竜彦 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 地震津波防災研究部門, 主任研究員 (30550933)
近貞 直孝 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 地震津波火山ネットワークセンター, 主任研究員 (90318197)
前田 拓人 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (90435579)
大石 裕介 株式会社富士通研究所, その他部局等, 研究員(移行) (90816240)
対馬 弘晃 気象庁気象研究所, 地震津波研究部, 主任研究官 (00589864)
久保田 達矢 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 地震津波火山ネットワークセンター, 特別研究員 (70808071)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 津波 / 即時予測 / 海底水圧観測 / 動圧効果 / 3次元シミュレーション |
研究実績の概要 |
昨年度開発した手法をもとに,地殻変動や海水中の動圧効果までを含んだ海底水圧記録の再現のための,3次元数値シミュレーションの準備を進めた.現実的なプレート境界形状の上の不均質な断層破壊によって生成される全波動シミュレーションを目的として.2011年東北地方太平洋沖地震を対象として検討したが,既存のデータ解析に基づく震源モデルでは,断層すべりの短波長成分が不足し,実際に近地海底観測点で記録されたような現実的な記録を合成するには不十分であることが明らかになった.そこで,シナリオ地震の強震動シミュレーションで提案活用されている不均質断層モデルのアップスケーリング手法を活用し,長周期では既存断層モデルによく一致しつつ短波長滑り成分をもつような地震断層モデルを作成した. OpenFOAMによる3次元津波伝播シミュレーションでは,2次元分散波モデルと比較し,短波長の津波がより高精度に再現可能であることを解析解との比較から明らかにした.特に,海溝軸付近で想定される短波長の津波を2次元モデルよりも高精度に予測できる可能性が確認できた. また,沖合の海底水圧計が観測する複雑な記録を地震動と津波成分に分離する手法を開発した.従来の津波予測手法では,津波の伝播速度は遅いため,観測点に十分な津波が観測できるようになるまでしばらく待つ必要があったが,今回の手法で得られる地震動成分を適切に利用することで,地震直後の津波の予測の精度の向上が見込める. このように,沖合観測および震源域直上の観測では,短波長の津波,地震動と混在する津波など,従来の湾内で観測される津波とは異なる特徴的な性質をもつ.新しい観測態勢に対応するためには津波の発生と伝播の理論の再構築が重要であり,流体力学に加え,弾性体力学が津波研究において重要な役割を果たしていることをレビュー論文として報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である現実的な断層運動から励起される地殻変動や海水中の動圧効果までを含んだ海底水圧記録の再現まで,もう一歩の段階である.最終年度(来年度)では,プレート境界形状の上の不均質な断層破壊によって生成される全波動をシミュレートし,その仮想データを用いた津波予測技術の標準評価法を提案できる見込みである.研究は,おおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発した要素技術を組合わせることにより,現実的な海底地震津波観測記録を合成する.これを利用した津波即時予測技術の評価のための標準評価法を提案し,予測技術の共進化に貢献する. また,近い将来発生するとされる南海トラフ巨大地震時の破壊は多様であること知られている.これまでは,最も基本的な破壊パターンを想定した地震時破壊シナリオ,津波発生シナリオを想定してきた.今後,地震動の励起量が極端に少なくなる津波地震の震源など,現在得られている地球物理データをもとに,力学的に発生しうる多様な破壊シナリオ,津波発生シナリオを想定する手法を開発する.このシナリオに基づいて,本研究で開発する手法で現実的な海底水圧記録を合成し,今後の津波災害の軽減に資するデータを提供する.また,海底水圧記録のうち,これまで活用されてこなかった地震動成分を活用し,沖合の地震の震源断層の時間・空間の高解像度な推定に取り組む予定である.
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