研究課題/領域番号 |
19H02411
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
松本 浩幸 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(地震津波予測研究開発センター), 副主任研究員 (80360759)
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研究分担者 |
梶川 宏明 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (50443180)
木村 俊則 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(地震津波予測研究開発センター), 研究員 (30520845)
有吉 慶介 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(地震津波予測研究開発センター), グループリーダー代理 (20436075)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 圧力計 / 地殻変動 / ドリフト / 水晶振動式圧力計 / シリコン振動式圧力計 |
研究実績の概要 |
海底に設置した圧力計は、水深変化を高分解能で計測できることから、大地震発生に至る準備過程で発生する鉛直方向の地殻変動も計測できることが期待されている。しかしながら、圧力計にはドリフト(偏差が時間経過とともに変化する現象)が発生することが知られており、海底観測によればその量はほぼ一定で1ヶ月あたり1 hPa程度となっている。圧力計に重畳されるドリフトが予測される定常的な地殻変動量よりも大きくなる場合があり、ドリフトによる誤差が地殻変動観測の実用化へ向けてのボトルネックとなっている。 平成31年度(令和元年度)は,海底に設置された圧力計が観測するドリフト現象について考察するため、室内実験によりドリフト現象の再現を試みた。具体的には海底環境を再現した実験室において、重錘形圧力天びんにより圧力計に連続印加を施した。なお、室内実験では従来から海底圧力計で利用されてきた水晶振動式圧力計に加えて、感圧メカニズムが異なるシリコン振動式圧力計にも同時印加して、両者のドリフト特性の違いを明らかにした。 まず、新規購入した水晶振動式圧力計とシリコン振動式圧力計を産業技術総合研究所の重錘形圧力天びんを使って、連続印加前の各圧力計の校正曲線を取得した。その後、海洋研究開発機構で、海底環境を再現した実験室で重錘形圧力天びんを使って連続印加を施した。その結果、水晶振動式圧力計は海底現場と調和的なドリフトが観測された。またシリコン振動式圧力計は水晶振動式よりも変化率が数倍大きいドリフトを示した。連続印加後には校正値の時間変化を追跡して、印加時のドリフト曲線を折り返すように校正曲線が戻ることを確認した。 さらに海洋研究開発機構で実施した一連の印加試験の後、産業技術総合研究所の重錘形圧力天びんで再び圧力計の校正値を取得し、印加前後の校正曲線を比較した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究全体計画の前半に実施する予定であった、重錘形圧力天びんを使った室内実験まで達成した。水晶振動式圧力計のドリフト特性が海底に設置した圧力計の現場観測データを再現することを確認し、海底現場データ解釈に資する実験データを取得できた。また水晶振動式圧力計とシリコン振動式圧力計への同時連続印加を施し、両者のドリフト特性の違いを明らかにできた。これらの理由により、本研究はおおむね順調に進捗しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の室内実験を通じて、シリコン振動式圧力計のドリフト変化が水晶振動式圧力計よりも大きいことが判明した。この実験結果を考察する過程で、シリコン振動式圧力計でヒステリシスが小さいセンサーが市場にあることを知り、ドリフトが小さいことが期待される。前年度に実施した実験の再現性を確認する実験のときに、このセンサーも追加で評価して、ドリフト特性を評価することを計画している。 また海底現場の圧力計データの解析も進める。とくに海底現場の圧力計で海底地殻変動を計測しようとするとき、ドリフトに加えて熱的強制による季節変動や力学的な海洋循環の海洋変動の寄与が無視できないことが明らかとなってきた。黒潮の影響を受ける海域に設置された圧力計と近傍の潮位観測の長期観測データを精査することで、海底圧力への海洋変動の寄与を明らかにして、地殻変動の高精度計測を目指すことにする。
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