研究課題
従来のHanle効果は、注入スピンの向きがチャネル面内に向いていることから、スピンバブルを利用した非局所スピン注入を使うのが殆どであった。一方、スピンの向きが面直方向になれば、測定方法として通常のホール効果測定を利用できることが理論的に明らかにされている。これに対応した実験例が少ないのは非磁性体への注入スピンの向きが面直方向になるケースが少ない為と考えられる。2020年度以降、垂直磁化膜特性をもつ希土類遷移金属フェリ磁性体(GdFeCo)を使って電子正孔補償金属YH2へのスピン注入下Hall効果(逆スピンHall効果,ISHE)を観測してきた。 2022年度は、スピン由来信号であることの証左を得る目的で、Hall効果で観測される横電圧に対する面内磁場依存性に多くを費やした。すなわち、外部磁場を注入スピンの向きに対して垂直方向に印加して(面内磁場)、注入スピンを歳差運動させながら、逆スピンHall電圧の面内磁場依存性を測定した。Hanle測定は、2021年度から実施してきたが、Hanle信号を示すサンプルとそうでないサンプルが存在した。前者の特徴は、Hall-barがチャネル電流方向(ソース―ドレイン電極方向)に関して対称形状であり、後者はそれが非対称である。この点を検証するために、2022年度では、前者と同様な対称的形状Hall-barサンプルを新規に作製し、そのHanle効果を測定した結果、2020年度に製作したサンプルに比べて数倍大きなHanle信号を観測した。Hanle信号消失時の磁場0.9mTをスピン才差運動の周期(ラーモア周期)とみなせば、注入スピンの緩和時間が約40 nsであることが分かる。仮に、Cuの拡散係数(0.047m^2/s)を用いてスピン拡散長を求めると、約43μmである。この値は、2021年度の当該実績報告書中で記述した値40μmによく一致する。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Physica Scripta
巻: 98 ページ: 045912:1-15
10.1088/1402-4896/acc4f2