研究課題/領域番号 |
19H02414
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木村 薫 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (30169924)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 準結晶 / 半導体 / 第一原理計算 / バンドギャップ / 生成エネルギー / 電気伝導率 / ゼーベック係数 |
研究実績の概要 |
A) Al系正20面体「半導体準結晶」の創製と熱電物性評価 準結晶半導体探索の次のステップとして、より高次の1/1近似結晶で半導体を見つけることを試みた。具体的には、Al-Pd-Co系に存在するF相がKGB1/1モデルの2×2×2の超格子構造を有することに気づき、これが半導体候補物質として有望であると考えた。第一原理計算によって得られたバンド構造から、Al-Pd-Co系KGB1/1モデルが半導体となることが分かった。半導体となる理由は、金属間化合物半導体の電子状態を説明する5t+4c-b則の例外となることも分かった。Al-Pd-Co系1/1近似結晶が実際に半導体的な挙動を示すかどうかを熱電物性測定によって評価した結果、電気伝導率とゼーベック係数の温度依存性からAl-Pd-Co系1/1近似結晶は半導体的な挙動は示さないことが分かった。半導体にならなかった原因として、実験的に作製された試料の結晶構造が計算モデルと異なるため、その違いによってバンドギャップが消失したことが考えられる。この仮説の妥当性を確かめるために、計算モデルの遷移金属原子の配置を系統的に変えて、エネルギー安定性とバンド構造を調べた。
B) B系正20面体「半導体準結晶」の創製 ボロン準結晶の生成エネルギーの算出とその評価を詳細な条件設定などを統一して行った。oblateの構造は既存の報告のある構造よりも生成エネルギーが大きく、不安定であった。近似式による推定値がα型1/1近似結晶において第一原理計算による生成エネルギーの計算値とほぼ一致し、近似式の妥当性が確認された。β型1/1近似結晶と準結晶の推定値はα-Tetragonal boronの生成エネルギーよりも小さく、準安定相として準結晶の生成の可能性が示された。さらに、状態密度計算からボロン単体の準結晶も半導体であることが強く期待できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A) Al系正20面体「半導体準結晶」の創製と熱電物性評価 Al-Ru-Si系1/0近似結晶で、世界初のAl系半導体近似結晶を創製したのに続いて、より近似度の高いAl-Pd-Co系1/1近似結晶の半導体化の可能性を検討できた。結果は、半導体にならなかったが、その原因を特定できたので、さらに近似度の高い近似結晶の半導体化に進むことができる。
B) B系正20面体「半導体準結晶」の創製 第一原理計算による生成エネルギーの評価により、純ボロンのβ菱面体晶型1/1近似結晶と正20面体準結晶が、準安定相としては実現できることが示された。純ボロンの過冷却液体急冷による、実験的検証に進むことができる。
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今後の研究の推進方策 |
A) Al系正20面体「半導体準結晶」の創製と熱電物性評価 より近似度が高く、第一原理計算によりバンドギャップの存在を明らかにした、Al-Pd-Ru系2/1近似結晶と準結晶において、キャリア密度の最適化により、半導体を実現する。得られた半導体の熱電性能を最適化する。
B) B系正20面体「半導体準結晶」の創製 静電浮遊法とハンマークエンチ法を組み合わせた装置を用いて、純ボロンの過冷却液体急冷を行い、準安定相としてのβ菱面体晶型1/1近似結晶や正20面体準結晶を探索する。
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