A) Al系正20面体「半導体準結晶」の創製と熱電物性評価 今年度は、より近似度の高い近似結晶や準結晶において半導体の創製を目指した。具体的には、第一原理計算によって、Al-Pd-Ru系KGB2/1近似結晶のモデルのバンド構造を計算した結果、フェルミエネルギー近傍に0.1 eV程度のバンドギャップを持つことが分かった。そこで、Al-Pd-Ru系の2/1近似結晶と準結晶の高密度焼結体の単相試料を作製し、熱電物性の測定を行った。その結果、650 K以上におけるσのアレニウスプロットから見積もったバンドギャップは0.2 eV程度であった。Seebeck係数Sは準結晶相の試料で最大100 μV K-1と比較的大きな値を示した。また、KGB2/1モデルの電子構造を用いてキャリア密度を変えてSを計算すると、単位胞当たり2-3個の正孔数で計算したSが一部の試料の実験値を定量的に再現した。これは、フェルミエネルギー近傍にバンドギャップが存在し、単位胞当たり2-3個の電子をドープすることで、半導体準結晶が実現できることを示唆している。
B) B系正20面体「半導体準結晶」の創製 静電浮遊法とハンマークエンチ法を組み合わせた装置を用いて、純ボロンの過冷却液体急冷により、準安定相のα正方晶ボロンと共に得られた、未知相の構造解析を、透過型電子顕微鏡を用いて試みており、現在進行中である。
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