研究課題/領域番号 |
19H02421
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木口 賢紀 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (70311660)
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研究分担者 |
白石 貴久 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (50758399)
山田 智明 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (80509349)
今野 豊彦 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (90260447)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | PMN-PT / PZT / 薄膜 / 組成相境界 / 90 °ドメイン / 熱応力 / ミスフィット転位 / ヘテロ界面 |
研究実績の概要 |
化学溶液堆積(CSD)法を利用した(1-x)Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-xPbTiO3(PMN-xPT)(x=0.8)薄膜や同じく相境界を示す強誘電体であるPbZrxTi1-xO3(PZT)(x=0.7)のSrTiO3(001)基板上への固相エピタキシーによる薄膜成長メカニズム、ならびに組成相境界における2相共存組織やドメイン構造形成のメカニズムについて、STEM-EELS法により調べた。 固相エピタキシーによるPZTのエピタキシャル成長では、有機金属錯体を熱分解した非晶質前駆体の段階で既にペロブスカイト型構造の基礎となる短距離秩序が形成されること、基板界面に核生成サイトとして作用しうる整合的に歪んだ界面層がPseudomorphicに成長することを見出し、CSD法における固相エピタキシーにおける核生成・成長メカニズムを原子レベルで明らかにした。 また、結晶化に伴って残留炭素が減少しながら大きく体積収縮し、緻密化しながらエピタキシャル成長すること、そして結晶化によりミスフィット転位が導入されて整合歪みの緩和が起こり整合界面から半整合界面に変化する、つまり気相法におけるStranski-Krastanov成長モードのような構造変化が起きることが明らかになった。 結晶化後の薄膜の組織については、薄膜の基板側が正方晶相が安定化され、90°ドメインはミスフィット転位を核生成サイトとして形成されることが明らかになった。一方、薄膜の表面側では菱面体晶相が形成され、2層構造からなる組成相境界組織となった。 同様の結果がPMN-PT薄膜においても観察され、組成相境界を持つペロブスカイト型強誘電体において共通する現象であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
感染症の蔓延に伴う緊急事態宣言などによって4ヶ月以上にわたり研究の遂行が困難となったため、当初予定通りには進まなかったが、最終的に研究計画において予想以上の進捗があったため。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、初年度および2年度に明らかにしたPMN-PT薄膜に着目し、組成相境界近傍でのTi組成変調と基板種による格子定数の変化から格子ミスマッチの影響と、薄膜と基板の熱的ミスマッチに由来する影響とを分離して、組織形成におよぼす基板の弾性的拘束のメカニズムを詳細に調べる。これらの研究によって、ナノドメインの核生成サイトとしてのミスフィット転位の役割や熱応力による相安定性の制御と組成相境界の制御指針を明らかにする。具体的には以下の実験を行う。 (1) 種々の基板上へのPMN-PT薄膜の成膜:SrTiO3 (001)、LSAT(001)、KTaO3(001)単結晶基板上にペロブスカイト相単相を化学溶液堆積(CSD)法でエピタキシャル成長を試みる。 (2)格子ミスマッチが組織形成に及ぼす影響:収差補正STEMおよび電子エネルギー損失分光(EELS)法により薄膜断面構造を調べ、ナノドメインの核生成サイトとしてのミスフィット転位の役割を明らかにする。 (3)熱的ミスマッチが組織形成に及ぼす影響:収差補正STEMおよびEELS法により薄膜断面構造を調べ、熱応力による相安定性の制御と組成相境界の制御指針を明らかにする。 (4) 2次元弾性場の下での相転移挙動の解明:(1)で作成したのPMN-PT薄膜について、2次元弾性場の下での相転移挙動を検証するため、高温その場X線逆空間マッピング法により種々の基板上に成長した種々の組成のPMN-PT薄膜の構造相転移挙動の温度依存性を調べる。
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