研究課題
放射線の入射によって発光する、高機能発光材料であるシンチレータについて、いままでの発光領域とは異なる赤色~近赤外線で発光する新しいシンチレータの開発を行った。具体的には、塩化物、臭化物といったハロゲン化物、および、酸化物を中心に、発光波長600 nm~1100nm程度の赤色~近赤外線のシンチレータをブリッジマン法やマイクロ引き下げ法などを利用して育成を行った。育成後には、結晶が正しく育成されているか、結晶構造や組成の分析を行った。さらに研磨などの加工を行った後に、目的の発光波長(600 nm~1100nm程度)に合致するか確認した。さらに、1ガンマ線光子入射で変換されるシンチレータ光子数(発光量)をシングルフォトンカウンティング法で確認したところ、ヨウ化物で発光波長700nm、発光量50,000光子/MeV以上と目標値の新しい材料を見つけることができた。開発したシンチレータについては、新しい材料であるため、その結晶構造の解明も進めて、発光のメカニズムと結晶構造の関連性について、調査を進めた。たとえば、ある結晶については、Hfなどの金属元素の周りをヨウ素が6個配置した八面体構造をとることが分かっており、この八面体構造が赤色の発光を発現させることが示唆されている。赤色発光シンチレータの利点として、チェレンコフ発光などの青色発光との切り分けができるため、チェレンコフ発光などの青色発光がノイズとなるような放射線計測の現場で利用する点がある。そこで、このような応用、特に線量の高い領域での測定など、新しい検出器への搭載に向けた、結晶の加工などについても研究を進めることができた。
1: 当初の計画以上に進展している
当初計画を前倒して、当該年度中・期間中に、目標の発光波長と発光量を持ち、かつ、蛍光寿命も早い理想的なシンチレータを見つけることができたため。
引き続き、組成の設計計画に基づき、さらに適切な発光波長の中で、より高い発光量を示す新規シンチレータの開発を行う。さらに、見つけた新規材料について、発光の起源がまだ特定されていないことから、材料設計指針の精度をさらに高める目的も含めて、その特定を進める。そのために、発光強度の温度依存性などを10ケルビン程度の低温から常温・高温まで測定し、そのふるまいから発光起源について議論する。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 7件、 査読あり 9件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 15件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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http://yoshikawa-lab.imr.tohoku.ac.jp/personal/kurosawa/index.html