研究課題/領域番号 |
19H02423
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藤原 宏平 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (50525855)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | パルスレーザー堆積法 / LiNbO3型酸化物 / イルメナイト型酸化物 / コランダム型酸化物 |
研究実績の概要 |
多彩な電子特性を示す機能性酸化物が次世代エレクトロニクスの担い手として嘱望されている。本研究では、代表者が分子線エピタキシー法による薄膜成長を確立したLiNbO3型ZnSnO3およびMgSnO3を舞台に、構造由来の自発分極と電子有効質量の小さいSn 5s伝導帯の協奏による革新的メモリデバイスの創出に挑む。同時に、電気伝導性やスピントロニクス機能(磁性、スピン伝導)が期待されるコランダム型およびイルメナイト型酸化物も開拓する。初年度は、LiNbO3型ZnSnO3薄膜の高品質化に向けた基礎物性評価と関連物質の薄膜合成に取り組んだ。具体的成果を以下に示す。 1.ZnSnO3およびMgSnO3薄膜の評価 不純物ドーピングや静電キャリア蓄積に向けた基礎的理解として、X線光電子分光(東北大学金属材料研究所新素材共同研究開発センター)による電子状態解析を行った。ZnSnO3薄膜でZn2+、MgSnO3薄膜でMg2+を検出し、Sn内殻スペクトルのピークエネルギーを合わせた考察からSn4+と決定した。 2.関連物質の薄膜合成 LiNbO3型酸化物と類似する金属‐酸素八面体ユニット配列を有するコランダム型およびイルメナイト型酸化物の新物質を探索した。これら、物質は無極性ではあるが、ヘテロエピタキシャル成長のバッファー層や分極反転測定用のキャパシタ構造のボトム電極層など関連材料として有望である。電気伝導性を有する物質の合成を目的に、反強磁性Cr2O3にRu置換を施した薄膜をパルスレーザー堆積法により作製し、絶縁体‐金属転移を同物質系で初めて観測した。さらに、イルメナイト型酸化物の超格子を作製し、新物質の極薄膜安定化にも取り組んだ。真空成膜の高い非平衡性を活用した新物質合成ルートとして、今後の発展が期待できる。新しく導入したX線回折装置を用い、これら薄膜の結晶品質・配向性評価に活用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画に記載した内容(ZnSnO3およびMgSnO3薄膜の評価、関連物質の薄膜合成)の大半を実施できたことに加え、コランダム型およびイルメナイト型新規酸化物の合成において進展が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、薄膜合成と物性評価を相補的に進め、革新的酸化物デバイスの創出に資する材料開発に取り組む。今後は、コランダム型およびイルメナイト型酸化物が示す物性を利用した素子作製にも着手する。同時に、これら物質をバッファー層に活用して、LiNbO3型酸化物の低温成長や結晶性向上、分極反転評価を試みる。
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