研究実績の概要 |
無毒で豊富な元素で構成される高性能熱電半導体の実現を目指して、層状遷移金属化合物のバルク二次元電子ガスを利用して巨大熱電能を引き出す、その材料設計指針を確立することを目的としている。昨年度は、層状遷移金属窒化物AETMN2(AE=Ca,Sr,Ba、TM=Ti,Zr,Hf)に着目し、グローブボックスから大気解放無しで直接窒化処理が可能な電気炉を用いて、全て高純度金属を出発原料として合成条件を最適化することで、90mol%を超える高純度バルク試料の作製に成功した。今年度は、合成時に窒素源を用いることで、酸化物不純物の生成を抑制し、バルク試料の純度を95mol%まで向上させることに成功した。その結果、高純度化したバルク試料が温度35Kで強磁性を示すことを発見した。磁性元素を含んでいないにも関わらず、強磁性を示すことから、TMイオンを含む2次元層に由来した特異な磁気物性を見出せたと考えている。また、第一原理計算により、異原子価イオンの添加によるドーピング機構とキャリア制御について検討し、高純度化したバルク試料にLa,Nb,Ta等の異原子価イオンの置換ドーピングを行い、系統的にキャリア輸送特性の評価を行った。また並行して、パルスレーザー堆積-スパッタリング複合成膜装置を用いて、エピタキシャル薄膜の作製条件を検討し、成膜時の窒素分圧と熱処理温度の最適化を行った。また第一原理計算により、同様にTMdxy軌道が伝導帯を形成する化合物を探索し、Moを含む層状化合物を見出した。
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