研究課題
本研究では、代表者らが独自に進めてきた、酸化物結晶化ガラスによるナトリウムイオン電池材料について、酸化物全固体電池でのみ確認できる特異な反応性について、超高圧充電に対する安定性と合金系負極活物質の反応性に注目して、モルフォロジーと電気化学的側面から解明することを目的とする。結晶化ガラスを活物質に用いることで、これまで電気炉の熱処理で行っていた全固体電池の作製に成功しているが、代表者らは従来からガラスのレーザープロセス技術を確立しており、電気炉では達成できない位置選択的な局所加熱を可能にする。全固体電池において活物質と固体電解質の接合は非常に重要であるが、異種材料同士を接触させて加熱することは接触界面での反応が必然と起こってしまう。反応によってイオン伝導を阻害する結晶が形成すると電池にとっては致命的であり、熱処理だけでは組成と部材の熱物性で熱処理条件が制限されてしまう。代表者はレーザープロセスと熱処理を組み合わせることで、この問題を解決できるのではと着想し、2020年度はレーザー誘起によるリン酸正極のガラス化と物性評価、および固体電解質との接合手法の実証を進めた。固相反応によって合成したNa2FeP2O7セラミック基板に赤外レーザーを照射したところ、瞬時に溶融し、ガラス状態となることを発見した。さらに固体電解質基板にNa2FeP2O7粉末を堆積させ、レーザー照射による無加圧接合に成功した。作製した固体電解質ー正極複合体は全固体電池として機能し、酸化物系では困難と考えられてきた界面抵抗の低減に重要な材料及び手法を確立した。
2: おおむね順調に進展している
リン酸鉄ナトリウムのレーザー誘起による構造変化の発見は、本研究のさらなる展開に重要な発見であった。コロナ禍の影響もあり、レーザー照射の装置が2020年度には導入できなかったことで、2021年度に繰り越したが、2021年度に着実に成果を上げることができた。
レーザープロセスは酸化物全固体電池の構築に重要なプロセスであることを発見し、その発展性について示すことができた。本手法は負極活物質にも展開できる。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)
International Journal of Ceramic Engineering & Science
巻: 2 ページ: 332~341
10.1002/ces2.10072
Scientific Reports
巻: 10 ページ: none
10.1038/s41598-020-66410-1
https://mst.nagaokaut.ac.jp/amorph