圧電セラミックスの機能は、電気分極の向きが異なる領域(ドメイン)を隔てるドメイン壁の移動や回転といった運動と密接に関係するが、その動きは欠陥や不純物によって容易にピン止めされる。本研究では、斜方晶由来のCharged(荷電)60°ドメイン壁をもつニオブ系無鉛圧電セラミックスを対象にする。ニオブ系は自発分極起源のNbO6八面体サイトと、これと電気的中立条件を満足するためのアルカリ元素から構成されたI-V系ペロブスカイト酸化物である。このニオブ系をモデル材料として、先端機器分析の相補的な組み合わせによる状態解析を行い、その評価解析結果を通じて、圧電体の疲労現象と酸素欠陥との関わりについて調べ、高負荷耐性の向上に結びつける新たな方策を探求する研究を実施する。 この上記目的を達成するために、本年度も引き続き、外国および国内の研究協力者らと共同で機器分析評価を実施し、強誘電性ドメイン構造の観察と評価に関するニオブ系のドメイン壁の形成の様子を体系的に調べた。さらに、ニオブ系以外のII-IV系ペロブスカイト酸化物である変性チタバリ系材料における結晶構造やドメイン構造との比較等にも取り組んだ。力学および温度場の変化に伴うラマン分光では、ニオブ系における斜方晶-正方晶相境界を含む応力-温度相図を作成し、高負荷環境下におけるドメイン構造の変化を予測可能とした。他方、インピーダンス分光では、元素ドープによって各種作製した粒界体積が異なるニオブ系の試料群について解析評価を進めた結果、粒子径が小さくなると全抵抗が増大するといった強誘電体多結晶で共通する認識とは異なる、アルカリ成分を含む材料特有の電気伝導性を酸素欠陥の分布予測と併せて考察可能とした。最終的に、新たな分極処理法も含めた高負荷耐性の向上策について提案可能とした。 以上の過程で得られた成果をとりまとめて、誌上および学協会で成果発表した。
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