研究課題/領域番号 |
19H02436
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉武 剛 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (40284541)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ナノダイヤモンド / 物理気相成長法 / 同軸型アークプラズマ堆積法 / 薄膜 / 半導体 / コーティング / 硬度 / ヤング弾性率 |
研究実績の概要 |
超ナノ微結晶ダイヤモンド/水素化アモルファスカーボン混相(UNCD/a-C:H)膜は,粒径10 nm程度の無数のナノ微結晶ダイヤモンド(UNCD)が水素化アモルファスカーボン(a-C:H)マトリックスに内在する構造をとり,膜中に無数のUNCDの界面・粒界が存在し,それを起源とする特異な光・電子状態が発現する等の特徴を有する。本研究では、UNCD/a-C:Hの光・電気・機械特性と膜構造との相関を調べ、その物性の期限を明らかにすることを目標としている。 汎用のバイアス電源を借用して、バイアス印加の効果を調べてきたが、ダイヤモンドの成長が促進されるような効果は全く観られなかった。そこで電源メーカーの協力得て本作製法に対応した仕様のバイアス電源を用いることにより、バイアス印加の実験を行ってきた。驚くことに、バイアス印加の最適化で、アンドープ膜で77 GPaを実現した。バイアスがない場合のアンドープ膜の硬度は50 GPaであり、バイアス印加により約27 GPaの向上を実現した。 ラマンスペクトル測定で、バイアス無しで作製された膜は1333cm-1のダイヤモンドのピークとアモルファスカーボンのGとDピークが混在したスペクトルとなるのに対して、汎用のバイアス印加装置で作製された膜は硬度が低下したが、それに対応してダイヤモンドのピークが不明瞭になっった。それらに対して、新しいバイアス印加装置を用いて作製した膜は、極めてシャープなダイヤモンドのピークを示すようになった。 バイアス印加の硬度化に伴い、膜はダイヤモンドの密度がCVD法で作製される多結晶ダイヤモンド膜に近くなっていると考えられる。室温プロセスにより、基板温度が約1000℃となる熱CVD法で作製される多結晶ダイヤモンド膜と同等の膜が得られるようになったことは、学術的にも工学的応用の観点からも極めて画期的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
膜堆積中の負バイアス印加を改良することにより、膜の硬度がこれまでの硬度50 GPaから72 GPaへ大幅に高まることがわかった。これは、負バイアス印加によりダイヤモンドの成長が劇的に高められることに因る。室温成長にもかかわらず、多結晶ダイヤモンドに近い膜がえられることは、工業的応用の見地から極めて有益である。
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今後の研究の推進方策 |
負バイアスの印加が極めてダイヤモンドの成長に効果的であることがわかった。これまでの研究結果をフィードバックした更に新しいバイアス装置の仕様を検討してきた。2020年度は仕様を確定するまでに至らず購入は控えた。2021年度に購入する予定である。
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