研究課題/領域番号 |
19H02439
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
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研究分担者 |
山本 卓也 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (10804172)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マルチマテリアル化 / 溶接・接合 / 表面塑性流動 / 傾斜機能付き複合層 / ショット衝突処理 / 高振幅超音波振動 |
研究実績の概要 |
本年度、ANSYS構造解析ソフトウェアを用い、高振幅超音波ブスターの設計を行い、超音波振動援用ショット衝撃処理用装置を準備した。具体的には、ANSYSを用いたシミュレーションを進め、端面積が広くかつ先端振動振幅が大きい超音波ブスターの設計・試作を行った。また、基板・ブスター端面間の距離と基板温度が可変の処理チャンバーの設計・作製を行った。次に、この装置を用いて、ZrO2ショット、TiC・TiB2の粉末粒子とアルミニウム(A1070)基板を利用した実験で基板温度を20℃~200℃の範囲内、処理時間を5~60minの範囲内で変化させ、処理条件の最適化を行った。この結果、以下のことが明らかになった。 基板温度が高く、かつ処理時間が長い条件では、表面複合化が促進される。しかし、UMCAプロセスの最も魅力的な条件である常温処理では、表面複合化がほとんど進行しなかった。また、粉末粒子がAl母相に不均一に分散され、特に母相結晶粒界面に粒子が濃縮されるという傾向にある。複合化処理の効率が向上するためにショットの材質を変更することを検討しており、その候補の一つとして高密度・高硬度のWC(タングステンカーバイド)製ショットが挙げられる。また、ショットの運動・衝突エネルギーを高めるために基板・ブスター端面間の距離を小さくすることが有効であると考えられる。現在、これらを確認する目的に予備実験を実施中である。また、複合組織が不均一になるのは基板の衝突処理における塑性ひずみの局所化とせん断帯が形成されるためと推定される。それを調査するため、STEM観察とEBSD解析の他、試料断面での微小硬さと弾性率の局所的な評価が有効であると考えられる。しかし、当初予定していた微小硬度計は予備実験を行った結果、測定精度が不十分であるため上記の評価は不可能であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和元年11月、実験試料の特性を評価した結果、当初予定していた設備では試料断面でのナノ硬度とヤング率の測定が困難であるため、材料特性の変化・塑性流動の評価が難しいことが判明した。研究遂行上、本評価を行うことが必要不可欠なため、対応可能な評価装置の購入を検討したところ、今年度中の納品が困難であったため、計画を延期して実施する必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、上述の成果を踏まえて、まずは塑性流動のメカニズムとそれを支配する主要因を解明することを主目的として実験と解析による検討を行う予定である。具体的には、アルミニウムと鉄鋼材の基材を用い、処理条件を変化させながら、基材表面上にナノ粒子(Fe2O3,TiN,W,Fe)を構成した複合層を合成する。その後、基材断面でSEM・TEM観察を行い、基材表層部内へ移動されたナノ粒子をトレーサとして塑性流動パターンを明確にする。さらに、基材表層部において断面硬度や残留応力などの測定を行い、塑性流動のメカニズムを詳細に解明する。特に、衝撃処理時に基材表層部内における超塑性変形が起こり、基材母相のナノ構造化・結晶粒界すべりが進行することによってトレーサ粒子が基材表層部へ移動されるか確認する。また、上述の理由で、試料断面における硬度とヤング率のマッピングを精度高くかつ短時間で行うためのナノインデンターの購入を検討しており、残額の一部を初年度から次年度に繰越すことに決めた。
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