研究実績の概要 |
令和2年度の研究では主に処理装置の改造と複合層の形成機構について調べたのでその結果を以下に概説する 複合化処理の効率が向上することを目的としてこれまで用いていたZrO2ショットを高密度のWCショットに置き換えて, 基板・ブスター端面間の距離を17mmまで下げて, ブスター振動振幅を77um(p-p)まで上げることにより衝突エネルギーが3倍以上高まった. この条件でトレーサとしてFe2O3粒子(粒径300nm以下)を、基板としてA1050合金 またはA6061合金を用い、複合化機構の解明を目的として衝突処理実験を1-30分間行った. この結果からショットの運動エネルギーを上げることにより複合層の形成が著しく進行することが明らかになった. EBSD分析結果によるとショット衝突処理により基板表層部の微細化が進行する. 等軸微細な結晶粒領域の深さは処理時間10分, 20分, 30分 の順に小さくなる傾向がみられる. 処理時間が10分間以内の場合, 組織微細化が処理時間とともに著しく進むことが確認された. 具体的に, 衝突処理により基板内に高密度転位壁と転位セルが形成されることで塑性変形が進み転位セルがマイクロバンドおよびブロック状の亜結晶粒に変化する. 処理時間を延長すると大角粒界が形成されそれによって組織微細化が進行する. また, 基板表層部内に撃ち込まれた粒子の表面近傍では粒子と母相の体積弾性係数が大きく異なるため, 高密度転位が発生・蓄積しやすくなる. その結果, 粒子近傍には応力が降伏値を超えると塑性変形がすべり面に沿って発生し, 粒子が表層部からバルクへ移動される. さらに, 粒子近傍で応力集中により亀裂が発生し, 粒界に沿って進展するため粒子が隣接結晶粒の回転により基板内部へ入り込むことが明らかになった.
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