研究実績の概要 |
昨年度計画した摩擦撹拌接合(FSW)試験は、使用可能なFSW装置では小型試料の接合加工が不可能であったため実施できなかった。 そのため、本年度は研究計画を若干変更して、次のような課題に取り組んだ。1)複合層形成機構の理解の促進、2)複合層形成過程における基板結晶構造の影響、3)粉末なしの複合層の作製。以下、得られた結果について概説する。 ショット衝突処理における様々な基材のマイクロ・ナノ硬度、反発係数、温度上昇を測定した結果、以下のことがわかった。ショットの運動エネルギーは、基板の塑性ひずみエネルギーと局所的な加熱に変換され、その効率は初期硬度や反発係数が低いほど大きくなる。このような条件下では、基板中の塑性流動とミクロ・ナノき裂治癒が促進される。また、基板の結晶格子タイプも重要な役割を果たす。すなわち、複合層の形成がHP, BCC, FCCの順序で進行しやすくなる。この意味で、複合層を得るための最も適した基板材は、低合金アルミニウム・銅合金である。一方、鋼製やチタン製の基板では、運動エネルギーのほとんどが弾性変形と双晶形成によって吸収されるため、基板表層部への粒子の侵入と分布はより悪くなる。しかし、アルミニウムA6061合金では、硬度や反発係数がやや高いものの、FCC格子と歪み硬化能により、複合層の形成はかなり良好のようである。 また、粉末を用いなくても複合層を形成することができることを示した。そのため、粉末で構成されるショット(例えばWC or W )を用い、ショットピーニング処理を基板に20分以上施すとショット表面から破壊が起こることで発生した粉末粒子が基板表層部内に移動されることによって複合層の形成が進む。その場合、複合層には粒子分散型および基板成分とショット成分からなるラメラ状の2種類があることを明らかにした。 最後に、本研究で得られた知見と結果を整理し、成果報告書を作成しているところである。
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