研究課題/領域番号 |
19H02442
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
薮塚 武史 京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (20574015)
|
研究分担者 |
高井 茂臣 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (10260655)
藤林 俊介 京都大学, 医学研究科, 特定教授 (30362502)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 炭素繊維強化PEEK / アパタイト核 / 表面改質 / 生体活性 / 骨結合性 |
研究実績の概要 |
炭素繊維強化ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)基板の表面に硫酸処理を施した。走査型電子顕微鏡観察により、孔径約0.5μmの細孔が基板表面全体に形成されたことがわかった。硫酸処理後に酸素プラズマ処理を行い、接触角測定を行ったところ、酸素プラズマ処理により基板表面が親水化したことがわかった。この基板をヒトの血漿とほぼ等しい無機イオン濃度を有する擬似体液(ISO 23317)に浸漬し、pHおよび温度を上昇させた。走査型電子顕微鏡観察により基板表面を調べたところ、基板表面全体にサブミクロンレベルのアパタイト核の形成が認められた。また、エネルギー分散型X線分析により元素分析を行ったところ、アパタイト核の成分であるカルシウムとリンが検出された。しかし、薄膜X線回折ではヒドロキシアパタイト等の結晶性リン酸カルシウムに帰属する回折ピークが検出されなかったことから、析出したアパタイト核はアモルファスリン酸カルシウムを主成分とすることが示唆された。 一連の処理を行った基材表面におけるアパタイト形成能を擬似体液浸漬試験(ISO 23317)により調べたところ、擬似体液浸漬1日以内に基板表面全体がヒドロキシアパタイトの鱗片状結晶からなる被膜により覆われることがわかった。さらに、エネルギー分散型X線分析ではカルシウムとリンの強いピークが検出され、薄膜X線回折測定ではヒドロキシアパタイトに帰属する回折ピークが検出された。以上の結果から、一連の生体活性処理を施した炭素繊維強化PEEKは、高いアパタイト形成能を示すことがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一連の生体活性処理を施した炭素繊維強化PEEKが擬似体液中で1日以内にアパタイト形成能を示したことから、基板への生体活性付与条件の最適化を初年度に概ね終了している。さらに、すでに動物実験による骨形成能評価を医工連携により開始しており、現時点で良好な予備的成果が得られつつあることから、本研究は当初の計画通り概ね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
生体活性処理条件最適化および動物実験を行う。昨年度、生体活性付与条件の最適化が概ね完了したため、ナノレベルでの材料界面性状を詳細に明らかにしていく。材料解析には、X線光電子分光光度計、走査型プローブ顕微鏡を用いる。 材料の生体内での骨結合能を評価するため、生体活性炭素繊維強化PEEKを日本白色家兎の脛骨に埋入する。力学試験により骨と材料との接着強度を評価する。組織学的評価により骨と材料との接触率を評価し、X線マイクロCTによる放射線学的検討も行う。さらに、材料表面における骨形成に関与するタンパクの遺伝子レベルでの活性をin vitro試験で評価する。X線光電子分光光度計、走査型プローブ顕微鏡、さらには接触角計を用いて明らかとなるナノ界面レベルでの表面性状との相関を考察するとともに、動物実験における骨形成との相関も解明していく。さらに、材料の生体安全性を評価するため、材料表面での細胞生存性試験を行う。
|