研究課題/領域番号 |
19H02445
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
國武 雅司 熊本大学, 産業ナノマテリアル研究所, 教授 (40205109)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ポリシロキサン / 接着 / ファンデルワールス力 / 無機高分子 / 熱可塑性ポリマー / 熱硬化性ポリマー |
研究実績の概要 |
有機ケイ素化合物の中でも剛直なかご構造を有する “かご型シルセスキオキサン(POSS)”を有するポリマーが近年注目されている。ポリマーへのPOSSの導入には、POSSを主鎖に有するもの、側鎖に有するもの、架橋点になるものと様々ある。POSS を主鎖に有するポリマーに着目し、2 官能性のPOSSとジメチルシロキサン鎖(DMS)を交互に繋いだPOSS-DMS交互型ネックレスポリマーを研究してきた。多段階縮合法と平衡重合法のふたつの重合法を開発し、様々な構造のバリエーションを系統的かつ網羅的に合成してきた。 このPOSS-DMSネックレスポリマーは、その特異な構造から、いくつものユニークな特性を持っているが、その一つに、ファンデルワールス接着がある。未架橋の熱可塑性POSS-DMS交互型ポリマーは、強靭なホットメルト型接着として、親水性、疎水性を問わない固体表面に強く接着することが見いだされた。ホットメルト接着剤は、熱可塑性樹脂を流動点温度以上に加熱し、接着させる界面を濡らした後、冷却することで接着を行うものであり、熱可塑性樹脂であるので、接着力の温度制御が可能であり、接着後、熱をかければ簡単に脱離することもできる。 基板との化学結合を持たず、POSS上のフェニル基がナノアンカーとなって表面の凹凸に追随することで、ファンデルワールス力による強固な接着を実現した。このような接着はフェニル基を放射状に持つPOSSユニットと、そのユニット間をつなぎ、応力を緩和するシロキサン鎖の組み合わせで始めて実現された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回、新たに、熱硬化型ポリマー系を開発した。従来のリニアポリマーを架橋基と混ぜるタイプの熱硬化系では、副生成物としての少量のガス発生が原因で、強靭な接着を実現することができていなかった。今回、反応系を精査することで、熱接着が可能で一旦接着すると、ガラス転移温度以上でも強靭な接着を実現させることに成功した。接着の強さそのものは、ネットワーク構造の有無には関係ないことを明らかにした。
|
今後の研究の推進方策 |
ポリマー中のPOSS構造を一部変えることで、従来より高いガラス転移温度をもつアモルファスなPOSSシロキサンポリマーを作成する。ガラス転移温度を120前後にすることで、熱湯に耐え、150度前後で変形、成形の可能なポリマーを開発する。
|