研究課題/領域番号 |
19H02446
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
遠藤 洋史 富山県立大学, 工学部, 准教授 (90455270)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リンクル / 3D造形 / 弾性毛管力 / 表面座屈 / ソフトロボット |
研究実績の概要 |
本研究ではエラストマー弾性体に『界面不安定性』ストレイン工学に基づく表面座屈を誘起し、周期的微細凹凸構造『しわ・リンクル』を構築する。ダイナミックな環境応答を示す植物に習い、リンクルフィルムの表面形状に同調した弾性毛管力フォールディング(流体の自動内包)を誘起し『高速立体転写』から、機能を付与した多彩な3D造形、ソフトロボットを開発することを目的としている。リンクル薄膜にはポリジメチルシロキサン(PDMS)薄膜を用いた。リンクル薄膜で光架橋性オリゴマー液体をフォールディング後、内包液体をゲル硬化させ、リンクル構造が立体転写された3D造形体を構築した。今年度は、金属ナノ膜の剥離性を利用し、造形体表面へのナノ膜立体転写も試みた。またAFM機能の一つであるフォースカーブ測定から表面凝着力を算出することにより、その剥離メカニズムの詳細を検討した。 併せて、UVオゾン処理とプラズマ処理を併用することにより階層型の同心円状のリンクル構造を作製し、その構造解析を実施した。温度応答性高分子を本フィルム表面に固定し、体積収縮を利用した薄膜の動的挙動を観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リンクル構造の有無に関係なく、プラズマ処理を施したPDMSフィルム(処理後、24 h経過したフィルムに蒸着)からは金属薄膜の剥離・転写が可能であった。一方、未処理のPDMSからは金属薄膜の剥離は成されなかった。すなわち、未処理のPDMSが金属薄膜とより強く付着していると換言できる。そこで平滑なPDMSフィルムにおける、プラズマ処理の有無による凝着力の違いをフォースカーブ測定から検討した。その結果、未処理のPDMSでは変形と材料粘性の影響を強く受けることが分かった。PDMSフィルムは弾性体であり、プラズマ処理後では表面硬化が成されるが、未処理の場合における表面近傍では粘弾性の寄与がより高いことが示唆された。リンクル薄膜からの良好な金属膜転写の要因は、PDMS-金属膜間の凝着力の低下だけでなく、リンクル構造に起因して、PEGDA硬化ゲルが金属膜を噛みこと(アンカー効果)など複合的に影響していることが考えられる。 水面上にフィルムを浮遊させ、常温から昇温していき動的挙動を観察した。円形フィルムの場合では、リンクル構造の有無に関わらずフィルム端部が振動する様子が観察された。長方形フィルムの場合でも同様な結果であったが、縦ストライプ体の方が横ストライプ体よりも長手方向の振動が顕著であった。温度上昇に伴い体積収縮したPNIPAmの挙動が、バルクのフィルム形態に及ぼすひずみに差異が生じたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
フォールディング実験の対照として、3Dプリンタを用いてAuxetic流路構造を作製し、最終的に液体金属を流入してフレキシブルセンサーやソフトロボット開発を目指すことを想定している。今年度は、その基礎実験も遂行した。液体金属の注入方法については、初めに流路内に空気が残らないように流路を押しつぶすことで脱気を行なった。続いて、流路内に空気を抜いた状態で液体金属を静かに注入していった。その結果、Auxetic構造流路全体に液体金属を充填することができた。液体金属の流入後には、各フィルムにおいてフレキシブル性を活かした伸長導電が可能であった。今後、形状をさらに変えることで多機能化を試みる予定である。
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