研究課題/領域番号 |
19H02452
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小嶋 隆幸 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (10732183)
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研究分担者 |
亀岡 聡 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (60312823)
藤井 伸平 鹿児島大学, 理工学域理学系, 教授 (90189994)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ホイスラー合金 / 金属間化合物触媒 |
研究実績の概要 |
金属間化合物は特有の電子状態と表面規則構造に起因したユニークな触媒機能を示すため近年注目されている。我々は三元系の金属間化合物群であるホイスラー合金(X2YZ)を触媒に応用し、Co2(Mn or Fe)Geがアルキンの選択水素化特性に対して優れたアルケン選択性を有することを見出すとともに第四元素置換(Mn-Fe置換、Ga-Ge置換)による触媒機能制御を実現した。しかし、優れた選択性の起源と第四元素置換による特性変化のメカニズムには不明な点が残されている。そこで、アーク溶解により合成した粉末試料だけでなく、エピタキシャル成長した薄膜試料を用いたり、アルキン選択水素化以外の反応をモデル反応に用いたりすることで、触媒機能について多角的に研究し前述の不明点を明らかにすることを目指し研究を行った。 本年度の主な成果として、2-プロパノール(PrOH)の脱水素反応に対する触媒特性を評価したところ、Co2(Mn,Fe)GeとCo2(Mn,Fe)Gaでは後者の方が触媒活性が高いことが明らかとなった。選択水素化における優れた選択性の起源として、不活性なGeが規則配列して活性サイトを狭めることによりアルケンの吸着が制限されてアルカンが生じにくくなるという仮説を立てていた。2-PrOH脱水素における活性がGa系>Ge系であったことはこの仮説を支持する。また、選択水素化においてFeをMnで置換していくと、電子状態変化に応じて見かけの活性化エネルギーは単調に減少するが反応速度は単調増加しないという奇妙な挙動が見られていた。2-PrOH脱水素においてはMn置換による電子状態変化に対する反応速度変化が妥当であったため、奇妙な挙動はホイスラー合金試料に由来する特有の性質ではなく、アルキン選択水素化という反応が本質的に備えているものであり、それを説明するメカニズムを考えなければならないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
薄膜試料を用いた研究に関しては、スパッタリング装置の納入および立ち上げに日数がかかり、年度末には新型コロナウイルスの影響もあったために満足に研究できなかったが、主に粉末試料を用いた2-プロパノール脱水素の研究により有益な知見を得ることができた。また、Co2FeGe試料をボールミルにより微粉化した場合、熱処理によりバルク部分の構造を完全に回復させても選択率が回復しない現象が観測されており、触媒特性と構造の関係について表面とバルクをつなぐ有益なヒントになる可能性がある。また、関連する国際共同研究も実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
Co2FeGeをボールミルで微粉化する試料について、粉砕条件を系統的に変化させ、アルキン選択水素化特性との関係を詳細に調べる。粉砕条件による表面積、反応速度、アルケン選択性の変化と、それらの関係を明らかにし、選択性の起源に迫る。また、薄膜を用いる研究について、Co2FeGeとCo2FeGaについて成膜条件を最適化し、面方位の異なるエピタキシャル単結晶薄膜を作製する。良質な試料についてアルキン選択水素化特性を評価し、面方位による違い、構成元素による違いを調べ、触媒メカニズムを明らかにしていく。
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