研究課題/領域番号 |
19H02453
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
盛田 元彰 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (30636626)
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研究分担者 |
橋高 勇 東京海洋大学, 学術研究院, 助手 (20781884)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 付着物抑制材料 / マグネシウムシリケート水和物(M-S-H) / 粘土鉱物 / 地熱 / 層状ケイ酸塩鉱物 / スケール / シリカ / 炭酸カルシウム |
研究実績の概要 |
前年度までの研究で,炭素鋼管が使用されている場合、初期スケールの形成優先サイトは腐食生成物上であることが分かっている。また,初期スケールはシリカ・シリケートであることもわかっている。このことから,初期スケーリング過程を明確にするべく、鉄系酸化物あるいはオキシ水酸化鉄とシリケートの相互作用について評価した。XRDパターン,FT-IRスペクトル,Ramanスペクトル,ゼータ電位をそれぞれ取得し,解析した。XRDパターンに変化はなく,ゼータ電位についても全て負に帯電していた。一方,IRスペクトルとRamanスペクトルには変化が見られた。これは,結晶相の変化や物理的な帯電による付着はスケーリングの初期形成過程に関係しておらず,化学的な結合が影響していることを示唆しており,変化していたスペクトルは水酸基であった。腐食生成物とシリカ・シリケートの反応は脱水縮合反応であったと考えられる。 初期形成スケールの構造を明確にするために、小浜温泉において採取した曝気前と曝気後に形成した初期スケールに対してXRD、FT-IR、TG-DTA解析を行ったが、文献において報告されているスケールの鉱物相のデータと完全に一致する鉱物相はなかった。そこで様々な鉱物の標準試料を準備しデータベースを構築した。データベースを参照し,それぞれの解析から得られる各鉱物相の特徴を見出し,析出したスケールの結晶相を同定した。 2019年度までに選定した緩衝液を用いて合成時のpHとスケールの構造の関係を整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定をしていた配管スケールの結晶相の同定法については確立できた。また,ラボ環境における現地スケーリングの模擬手法についてもスケーリング容易な物質とスケーリング困難な物質の生成に成功した。2021年度中に材料のスケーリング評価法を確立できる見込みを得た。2020年度予定していた国際学会(Wourld Geothermal Congress 2020)での発表が延期されたが,2021年度に開催予定であり,改めて発表する。以上より,おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度までにXRD、FT-IR、TG-DTAによる複合的な解析結果からスケールの構造を見出す手法を見出した。その手法を更に発展させ,2020年度は低結晶であってもXRDのみでスケールの構造をおよそ見当づけられる手法の見込みが得られた。本手法を標準試料に適用することでその精度を確認し完成させる。完成させた手法をこれまでに採取したスケールに適用し,スケールの構造解析を更に進める。 オートクレーブを用いた作製したスケール物質の合成において,生成された物質のXRD回折パターンがほぼ同一にもかかわらず,スケーリング容易な物質とスケーリング困難な物質の生成に成功した。今後官能基等の解析を進め,実際の地熱水中で形成されたスケールの構造と比較する。そして,形成容易なスケールを生成できる模擬手法の開発へつなげる。 問題点としては,一部地域のサンプリングが新型コロナウイルスの影響で協力を得ることが困難であるため,サンプリング予定地を変更する等を検討する。
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