研究実績の概要 |
スケールの構造は低結晶であり相同定が困難である。前年度までに構築したデータベースを用いて、XRD、FT-IR, TG-DTAの構造解析の結果と比較することで相同定できた。しかし、この構造解析の手法は3つの装置を用いないと同定が困難であることから汎用性がなかった。そこで、XRDのみを用いた簡易相同定法を開発した。その簡易同定法の結果は、3つの装置を用いて導き出した相と一致しており、その手法が有効であることを確認した。 上述のスケールの組織解析の結果に基づき、所有するスケール模擬装置を使用して、ラボ試験において実際の温泉地域のスケールの構造を模擬する手法の研究開発を行った。地熱流体には二酸化炭素が含まれることから、合成手法として二酸化炭素雰囲気でスケールを合成する手法を用いた。また、比較として同じ圧力で窒素雰囲気でスケールを合成した。結果として、二酸化炭素雰囲気で合成したスケールは配管表面に付着し、窒素雰囲気で合成したスケールは配管表面に付着せず、配管表面は腐食のみ生じた。また、二酸化炭素雰囲気で合成したスケールは、実際地熱発電所で採取したスケールの組成,沈殿物の様相,結晶構造や分子構造を模擬できていた。このように、現地スケールを模擬できる合成法を見出し材料表面上に付着させることに世界で初めて成功した。同内容を地熱分野のジャーナルであるGeothermicsへ投稿した。 材料表面のスケーリング量を評価できるように実験装置を改造し、材料表面上でのスケーリング性を評価できることを確認した。スケールとして形成容易であったスケールの組織から形成機構について検討しモデル図を構築、材料設計指針について提案した。
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