研究課題/領域番号 |
19H02454
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
湯川 宏 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (50293676)
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研究分担者 |
荒木 秀樹 大阪大学, 工学研究科, 教授 (20202749)
松本 佳久 大分工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (40219522)
南部 智憲 鈴鹿工業高等専門学校, 材料工学科, 教授 (10270274)
髭本 亘 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (90291103)
浅野 耕太 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (30415640)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 水素透過合金 / B2型金属間化合物 / 水素溶解特性 / 水素拡散性 / 水素占有状態 |
研究実績の概要 |
昨年度に引続きB2型結晶構造のPdCuとTiFe系合金を中心に実験および計算を行った。主な研究実績の概要は以下の通りである。 1.新たに開発したXRD-PCT法を用いて、B2構造のPd-53mol%Cu合金の室温~350℃のPCT曲線を初めて測定した。また、水素透過能の温度依存性を「水素の化学ポテンシャルに基づく水素透過能の統一的表現」に基づいてPCT因子および水素拡散の易動度の観点から解析し、低温域で水素透過能が大きく低下する要因が水素拡散性の低下にあることを明らかにした。拡散に影響する因子として、Pd副格子に置換固溶したCu原子を中心とするBCC-Cuユニットの存在が示唆された。 2.水素同位体であるミュオンおよび陽電子をシミュレーターとして用い、Pd-Cu合金膜について、水素透過膜における水素の状態とダイナミクスを調べた。陽電子寿命測定の結果、欠陥密度は低く、過剰Cu原子がPd副格子を占有していることが明らかになった。5~300Kでのミュオン(μ+)スピン緩和(μSR)解析を行った結果、特に低温で大きな温度依存性を持ち、その状態が温度により変化することを見出した。この結果と水素透過性の関連の検討を進めている。 3.TiFe(0.95)M0.05(M=3d遷移金属、Al, Cu, Si)の室温~300℃でのPCT測定を行い、水素固溶体領域における水素の溶解特性におよぼす合金効果を明らかにした。 4.B2構造のPdCuおよびTiFeに基づいて構築したモデルを用いて第1原理計算を行い、水素の占有サイトのポテンシャルについて検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度のPd-53Cu合金に引続き、当初計画していたミュオン照射実験、陽電子寿命測定を実施した。また、新たに開発したXRD-PCT法を用いて、B2構造のPd-53mol%Cu合金の室温~350℃のPCT曲線を初めて測定し、Pd-53Cu合金の水素透過能を水素の化学ポテンシャルに基づく水素透過能の統一的表現に基づいて解析した。その結果、低温域で水素拡散性の低下が低下することにより、水素透過能が大きく低下することを明らかにした。さらに、TiFe系合金について、PCT測定を系統的に行い、水素溶解度に及ぼす合金効果を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
PdCu合金については、低温域で水素の拡散性が低下する要因をより明確化するために、Cu濃度の異なる試料ついての解析を進める。また、空孔―水素クラスターの形成の可能性について、実験と計算の両面から検討する。 TiFe系合金については、合金化によって水素溶解度が向上した合金を中心に水素透過および水素拡散製について調査を進める予定である。
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