研究課題/領域番号 |
19H02455
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
佐藤 尚 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50402649)
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研究分担者 |
本塚 智 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30585089)
渡邉 義見 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50231014)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ショットピーニング / 相変態 / 集合組織 / 巨大ひずみ加工 / 磁性 |
研究実績の概要 |
①落錘型衝撃試験によるSP加工組織形成過程のモデル化 純Fe焼鈍材に対して落錘型衝撃試験を行うことでショットピーニング(SP)のモデル化を試みた.しかし,試験によって純Fe焼鈍材に生じるひずみ量が極めて小さいため,落錘型衝撃試験によるSPのモデル化が困難であることが分かった.そこで,SPの投射材であるジルコン粒子を用いたハンマリング試験にてSPのモデル化を試みた.その結果,10回のハンマリング打撃を施した試料の加工表面の結晶面方位には{111}が集積していた.しかし,ハンマリング打撃数が100回になると,加工表面の結晶面方位は{111}から{001}へシフトした.これらの結果から,純FeへのSPにて形成する{001}繊維集合組織は,{111}繊維集合組織を形成した後に{001}繊維集合組織になることが明らかとなった. ②SPにて生じる圧縮残留応力と相変態挙動の関係の究明 Fe-28%Ni-20%Co合金へのSPに伴う相変態挙動について調査した.この合金の相変態時に生じる体積変化は,Fe-33%Ni合金で生じる体積変化と逆の符号を有する.それゆえ,Fe-33%Ni合金では圧縮残留応力の発生にて相変態温度が低下するが,Fe-28%Ni-20%Co合金では圧縮残留応力の発生によって相変態温度が上昇する.Fe-28%Ni-20%Co合金にSPを施した結果,応力誘起マルテンサイト変態のみが生じた.よって,Fe-33%Ni合金へのSPに伴う逆変態の発生要因の一つは,圧縮残留応力の発生に伴う相変態温度の低下であることが分かった. ③SPにて形成する集合組織および集合組織形成過程の解明 純Fe圧延板へのSPにて形成する結晶学的集合組織に及ぼす潤滑剤の影響を調査した.その結果,加工表面に潤滑剤を塗布した純Fe圧延板の方が,より結晶配向の強い{001}繊維集合組織が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では,2020年までに「①落錘型衝撃試験によるSP加工組織形成過程のモデル化」,「②SPにて生じる圧縮残留応力と相変態挙動の関係の究明」および「③SPにて形成する集合組織および集合組織形成過程の解明」までを実施することになっている.SP加工組織形成過程のモデル化に関しては,当初予定である落錘型衝撃試験によるモデル化が出来なかったが,その代わりの手段としてハンマリング試験にて達成することができた.また,②および③のテーマも順調に学術的知見が得られている.また,③においては知財につながる知見が得られたため,特許も出願した.ただし,投稿論文への投稿が少々遅れているために,2021年度は論文投稿に力を入れる. 以上より,本研究課題はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は本研究課題の最終年度であるため,これまで得られた研究成果をすべて投稿論文にまとめて投稿したい.そのため,2021年度は,研究成果のまとめおよび成果発表に注力を置いて実施していく予定である. さらに,2021年度は,本研究で得られた基礎知見の応用研究である「SPを利用した次世代無方向性電磁鋼板の指導原理提案」を本格的に行う.2020年度に予備実験として,SPと熱処理を施した純Fe圧延板の磁気測定を評価したが,鉄損の低下が想定よりも小さい結果となった.そのため,2021年度は,鉄損の低減方法を見出し,次世代無方向性電磁鋼板の指導原理提案を達成したい. 以上を実施することで,本研究の課題である“SPの素性把握”の達成を目指す.
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