研究課題/領域番号 |
19H02458
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
袴田 昌高 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (30462849)
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研究分担者 |
中野 裕美 豊橋技術科学大学, 教育研究基盤センター, 教授 (00319500)
湯浅 元仁 同志社大学, 理工学部, 准教授 (70635309)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ナノポーラス / 細胞接着 |
研究実績の概要 |
金表面へのヒト間葉系幹細胞 (hMSCs) のナノポーラス金 (NPG) への接着率は平滑金 (FG) への接着に比べて減少した。一方で、hMSCsの細胞接着を担うコラーゲンの全体的なコンフォメーション変化は、NPGによってもFGによってもわずかであり、NPGによる大きな分子構造変化が接着率低下の原因ではないことが示唆された。 コラーゲンの分子断片 (CMS) と金の表面との相互作用を分子動力学 (MD) シミュレーションで調べ、hMSCs接着率の低下の原因を調べた。 NPGとFGのCMS間での折りたたみ構造に大きな差がないにもかかわらず、NPGでのコラーゲンの吸着エネルギーはFGでの吸着エネルギーよりも低いことがわかった。NPGのリガメント表面に存在する結晶格子ひずみは、コラーゲンの吸着挙動を局所化し、残基と鎖構造との間の相互作用を弱めた。その結果、吸着に関与する残基数はFGよりもNPGの方が多かったにもかかわらず、NPGへのCMSの総吸着率はFGよりも低かった。加えて、表面の結晶格子ひずみにより、金(111)表面に特有のソフトエピタキシャル形状が破壊され、エピタキシャルサイトへのアミノ酸の不適合が発生した。さらに、コラーゲンを構成するアミノ酸の動きが制限されているため、CMSとNPG表面との結合が弱まった。これらの効果の相乗により、コラーゲンのNPGへの結合が減少したと考えられた。 その他、NPGのアクチュエーション効果を利用した線維芽細胞への機械的刺激の影響とそのメカニズム、特にインテグリンの役割についても、実験・計算の両手法を用いて考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に対して細胞や実施内容の一部を変更・追加したが、吸着に及ぼす影響の解明などの成果を挙げている。
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今後の研究の推進方策 |
細胞接着率に及ぼすNPGの孔径の影響について、実験・計算の両面からより詳細に明らかにする。
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