近年,日本においても民生用航空機の製造が再開された.航空機産業は自動車産業と同様に裾野が広いことから,次世代の成長産業の一つとして大きく期待されている.航空機用の構造材料は,比強度の高さからチタン合金が多く使われている.構造用チタン合金として最も良く用いられているTi-6Al-4Vでは,塑性変形挙動の異なるα相とβ相が混在して塑性変形が起こる.またチタン合金は延性に乏しく,部材の加工に制限が生じるため,製品形状の自由度が少ない.この複相チタン合金における延性低下の原因は,各相単独での変形挙動の理解無くして明らかにする事はできない.本研究の目的は,辷り系毎の臨界分解剪断応力とその温度依存性を明らかにする事である.本年度は臨界分解剪断応力の温度依存性を測定し,α相において柱面辷り・底面辷りと錐面辷りの温度依存性が異なり,高温では錐面すべりの臨界分解剪断応力が最も低くなることが推察された.
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