研究課題/領域番号 |
19H02464
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
峯 洋二 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (90372755)
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研究分担者 |
眞山 剛 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (40333629)
高島 和希 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (60163193)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 強度・破壊靭性 |
研究実績の概要 |
準安定オーステナイト系ステンレス鋼の水素脆化を克服できれば、水素システム構造部材の軽量化・レアメタルの省資源化を達成でき、持続可能な社会の実現に大きく貢献できる。これまで、この種のステンレス鋼では、変形中に動的に起こる相変態、すなわちオーステナイトからのマルテンサイトの生成が水素脆化機構の理解を妨げてきた。我々は材料の微視組織から微小試験片を選択的に採取し、組織構成要素のマイクロ力学特性評価と変形および疲労き裂進展の素過程の直接観察を可能にする手法を世界に先駆けて開発している。本研究では、このマイクロ力学試験技術を利用して、変形過程における微視組織変化が問題となるオーステナイト鋼の水素脆化機構の解明を行う。特に、水素助長疲労き裂進展を支配する双晶境界の役割と成分偏析による縞状組織の影響に注目する。水素脆化の研究において、単調負荷下では、き裂発生後、直ちに破壊に至り、き裂進展挙動を観察することはできない。我々が開発している超小型コンパクトテンション試験片を用いた疲労試験により、き裂進展挙動を計測することが可能となるとともに、その後のt-EBSD解析でき裂周りに発達するマルテンサイトバリアントを同定でき、マルテンサイトと粒内き裂進展の関係を明らかにすることができる。2019年度は、試験片の厚さ方向には1つの結晶粒を含むようにするため、厚さを数十ミクロンとし、約1.2 mm角で超小型疲労試験片を作製し、マイクロスケールの微小き裂進展の素過程を観察する手法を確立した。また、ナノ双晶材の水素助長疲労き裂進展特性の調査に先立って、マイクロ引張試験により、単調引張荷重下における水素脆化特性とそのラメラ方位依存性を評価した。ナノ双晶材では、水素脆化を軽減できる可能性が得られた。その成果について、欧文論文2報、国際会議3件、国内学会3件の発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水素チャージ材における疲労き裂進展試験のデータ取得がやや遅れているが、その代わりに2020年度から実施予定であった、ナノ双晶未チャージ材についてすでに検討を進めており、全体の進捗としては順調である。また、2019年度の検討で、微細放電加工機の導入により、試験片作製の大幅な効率化が図れたため、早期に遅れを取り戻せる見込みを得ている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度にナノ双晶ラメラを含む単結晶のマイクロ引張試験で得られた、水素脆化に及ぼすナノ双晶ラメラの影響に関する知見を勘案しつつ、水素助長粒内疲労き裂進展とマルテンサイト変態の関係調査で確立した疲労き裂進展試験法を適用し、ナノ双晶ラメラの水素脆性改善効果を調査する。また、追加して、 初年度の調査において、微小疲労き裂の進展には、き裂先端前方における変形によって発達する組織の役割が重要であることが判明した。超微細粒を有する準安定オーステナイト鋼、安定オーステナイト鋼、フェライト鉄、マルテンサイト鋼について、機構を検討するとともに、水素の影響を調査する。三次元積層造形により作製される周期的ミクロ偏析組織についても、有効性の検討に着手する。
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