研究課題/領域番号 |
19H02466
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研究機関 | 静岡理工科大学 |
研究代表者 |
藤原 弘 静岡理工科大学, 理工学部, 教授 (80320117)
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研究分担者 |
感本 広文 静岡理工科大学, 理工学部, 教授 (20273328)
川畑 美絵 (太田美絵) 立命館大学, 理工学部, 助教 (30710587)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 粉末冶金 / 調和組織 / ハイエントロピー合金 / 衝撃特性 |
研究実績の概要 |
材料の強度と延性はトレードオフの関係にあり、両立が困難であることは知られている通りである。その二つの相反する性質を両立させうる金属材料として、ハイエントロピー合金(HEA)が注目されている。HEAは5つ以上の異なる金属元素を等原子量で含む合金であり、それによる高い配置のエントロピーとカクテル効果により、高い延性と強度を両立することが可能である。また、強度と延性を両立させる微細組織制御として調和組織制御が存在する。本研究では、HEAに調和組織制御を適用し、HEA調和組織材作製し、その微細組織と機械的特性、特に衝撃特性について詳細に検討した。 HEA材にはCrMnFeCoNi合金を用いた。HEA調和組織材料は粉末冶金技術を用いて作製した。ボールとHEA粉末の重量比が10:1で,200rpmm50時間でのメカニカルミリング処理を行い、その後、950℃、30min保持、50~100MPaで放電プラズマ焼結を行った。得られたHEA調和組織材にスプリット・ホプキンソン棒法衝撃圧縮試験を行った。 HEA調和組織材は従来HEA焼結体と比較して、0.2%耐力は増加率およそ0.6%と微増し,衝撃吸収エネルギー密度の減少率はおよそ50%とおよそ半分まで低下した。HEA調和組織材は従来HEA焼結体よりも高強度の特性は示さなかった。これは、CrMnFeCoNiの塑性変形機構は本来双晶変形が支配的であり、転位によるすべり変形は微細結晶粒でなければ起こらないことに起因する。調和組織における延性の増加は島状に分散した粗大結晶粒領域で担うが、この領域が双晶変形主体であると、調和組織の特性を十分に引き出すことは難しいことが分かった。この問題に対する対策は、複合調和組織化によって解決できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
種々の試行錯誤の上、HEA調和組織材料を作製するための、HEA粉末のメカニカルミリング条件、放電プラズマ焼結条件を明らかにすることができた。HEA調和組織材料の作製に成功した。さらに、衝撃特性を評価することができた。 衝撃特性は優れたものではなかったが、その原因を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、HEA調和組織材の作製に成功したが、その機械的特性は十分なものではなかった。この原因は、HEAであるCrMnFeCoNi合金の変形メカニズムは双晶変形が支配的であることである。文献調査によると、このHEAは結晶粒径2μm以上では双晶変形、それ以下ではすべり変形が支配的であることが分かった。調和組織は微細結晶粒のネットワーク部と粗大結晶粒の分散領域で構成されており、粗大結晶粒の分散領域が延性を支配することが知られている。したがって、2μm以下の微細結晶粒を有するHEAのネットワーク組織と双晶変形しないローエントロピー(LEA)合金の島状分散組織を有する複合調和組織の作製を目指す。このようなHEA/LEA複合調和組織材料であれば、双晶変形による機械的特性低下を引き起こすことなく、HEAと調和組織制御による高強度・高延性となる優れた機械的特性を引き出すことが期待できる。
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