研究課題/領域番号 |
19H02468
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
木村 勇次 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主席研究員 (80253483)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 構造・機能材料 / 材料加工・処理 / 鉄鋼材料 / 水素脆化 |
研究実績の概要 |
本研究では、「部材の一部が破壊・破損しても所定の荷重以下であれば部材そのものは完全に破断しない」というフェールセーフ機能を有する鋼(フェールセーフ(FS)鋼)の遅れ破壊挙動を調査することを目的とする。具体的には超微細繊維状結晶粒組織の制御によって引張強度を1800~2000MPaに調整したFS鋼から作製したボルトおよび環状切欠試験片の締結体の大気暴露実験をつくば市の物質・材料研究機構内の暴露場と日本ウェザリングテストセンター宮古島試験場で実施して、遅れ破壊挙動を金属組織、水素侵入挙動に関連付けて明らかにする。 今年度は、FS鋼材の創製と環状切欠試験片の設計・試作を行い、大気暴露実験のための準備を行った。100kg真空溶解で溶製した(0.4-0.6)%C-2%Si-1%Cr-1%Mo鋼材について、物質・材料研究機構(NIMS)の材料創製・加工ステーションが保有する温間溝ロール圧延装置を用いてFS鋼材を作製した。FS鋼材の超微細繊維状結晶粒組織は、光学顕微鏡法、走査型電子顕微鏡法、電子後方散乱回折法(EBSP)により観察した。ついでFS鋼材を用いて作製した1800MPa級ボルトからボルト型の環状切欠試験片を設計・試作した。比較として、FS鋼材を調質処理して得られる材料(QT材)の試験片も試作した。また、FS鋼材とQT鋼材の一部については、ラボでの水素脆化促進試験および腐食促進試験によって、材料の許容水素量と水素侵入量に関する基礎データを取得した。 0.6%C-2%Si-1%Cr-1%Mo鋼材については、2000 MPa級の超高強度での遅れ破壊挙動を調査することを目的として、1800MPa級FS鋼材と同様の手順でFS鋼材から2000 MPa級FSボルトを作製し、ボルト締結体の大気暴露実験を2020年3月から日本ウェザリングテストセンター宮古島試験場で開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次年度の研究に必要な大気暴露実験用試験体の設計および試作をほぼ予定通り完了するとともに大気暴露実験で必要となる基礎データをラボでの促進試験によって取得することができた。 また、年度末の新型コロナウイルス感染症の影響により日本ウェザリングテストセンター宮古島試験場でのボルト締結体の大気暴露実験の開始が危ぶまれたものの、2月中に試験体を作製完了し、暴露試験体設置作業の内容を一部見直すことで3月から大気暴露実験を開始することができた。なお、この暴露試験体設置作業の一部見直しにより予算が余ることとなった。 年度末の招待講演を予定していた講演大会は中止となった(学会発表欄に記載)。 したがって、本研究計画は概ね予定通りに進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、予定しているボルト型環状切欠試験片の締結体の大気暴露実験開始時期が遅くなることが懸念されるものの、ラボでの実験を充実させることでボルト型環状切欠試験片の適用性を検証する。その結果、必要に応じて環状切欠試験片の形状・寸法の一部修正を行う。 1800 MPa級の超高強度鋼材は、つくば市のNIMS構内での大気暴露実験でも微量な水素の侵入によって遅れ破壊することがこれまでの予備実験により予想されるため、まずは、NIMS構内での大気暴露実験でのデータ取得を取得してゆく。
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