研究課題/領域番号 |
19H02469
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
幅崎 浩樹 北海道大学, 工学研究院, 教授 (50208568)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | アノード酸化 / 酸素発生反応 / 電極触媒 / 多孔質膜 |
研究実績の概要 |
令和2年度は,以下の研究を実施した。 (1)FeNiCo合金をフッ化物含有エチレングリコール溶液中においてアノード酸化することで,KOH水溶液中における酸素発生反応(OER)が高活性化する機構について検討を行った。アノード酸化によってフッ化物からなる多孔質層が生成するが,これがKOH水溶液中で高活性な低結晶性オキシ水酸化物多孔質層へと変化することでOER高活性となることが明らかとなった。このアノード酸化電極は優れた耐久性も有することを明らかとした。したがって,FeNiCo合金のアノード酸化で生成するフッ化物相はOER高活性オキシ水酸化物を形成する優れた前駆体となることを見出した。 (2)OER活性化について,合金組成の影響を検討した。ニッケルリッチなNiFe二元合金をアノード酸化した場合,初期のOER活性は未処理の電極よりも低い。ただし,OER活性は次第に増大して未処理電極を大きく上回るようになる。したがって,NiFe二元合金とFeNiCo合金ではOER活性化速度に大きな違いが有ることが明らかになった。Raman分光測定の結果,アノード酸化したFeNiCo合金においては,KOHに浸漬するのみで速やかにオキシ水酸化物へと変化することが明らかとなった。一方,ニッケルリッチなフッ化物はその変換速度が遅いため,活性化に時間を要する。 (3)アノード酸化したNiも未処理のNiよりも活性化後はOERが高活性となる。この場合,用いるKOH水溶液の純度が活性にも影響し,鉄不純物を微量含む低純度のKOHを用いた場合には高純度KOHよりも高活性となる。活性化後の表面を分析したところ,低純度KOH水溶液中における電極表面にはFeがかなり取り込まれていることが明らかとなった。したがって,電解液種からのドーピングによるOER活性化手法もOER高活性電極の作製に有効なアプローチとなることがわかった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに世界トップクラスの高活性を示す電極をアノード酸化法を利用して見出すとともに,その活性化機構について有益な知見を得ている。さらに,水素発生反応についても,想定をしていなかった新しい発見もあり,今後の展開の可能性が広がっており,順調に推移している。
|
今後の研究の推進方策 |
以下に示す項目を中心に検討を進める。 (1)多孔質層の細孔構造の制御とガス発生特性との関係,(2)更なる高活性化のための電気化学表面積の増大の検討,(3)Fe, Co, Ni以外の添加元素を素地および電解液から導入し,そのOER活性への影響を検討,(4)水素発生反応へのアノード酸化の影響の検討。
|