令和3年度は,以下の研究を実施した。 (1)FeNiCo合金をフッ化物含有エチレングリコール電解液中においてアノード酸化することによる酸素発生反応(OER)の高活性化に及ぼすアノード酸化条件の影響を検討した。10℃におけるアノード酸化では,アノード酸化電流が低く,薄いアノード酸化皮膜しか生成しないことから,OER活性も30 min程度のアノード酸化ではあまり向上しない。一方,15℃や20℃でアノード酸化した試料では多孔質層が厚くなり,OER活性が大幅に向上することが明らかとなった。これに対し,アノード酸化を30℃以上で行うと,アノード酸化電流は大きく増大する一方,アノード溶解が主体となるため,アノード酸化皮膜の厚さは限定的あることも分かった。したがって,OER活性化の程度も小さい。以上のことから,アノード酸化皮膜の成長にはアノード酸化温度の影響が大きいことが明らかとなった。 (2)また,20℃以下の温度でアノード酸化を行った場合,アノード酸化皮膜は均一には成長しないことも明らかとなった。アノード酸化初期には比較的低い電流を示すが,この間に比較的低い電流を示し,アノード酸化皮膜は薄いが,局所的に電流が集中し,多孔質皮膜が厚い領域ができてくることが分かった。その後アノード酸化電流が増大してきて厚い領域が表面全体に広がって,全体が厚いアノード酸化皮膜で覆われることとなる。OER活性は表面全体が厚いアノード酸化皮膜で覆われると大きく向上する。また,電気化学インピーダンス法で求めた電気二重層容量とOER活性の間にはよい相関があることもわかり,皮膜厚さが増大すると電気二重層容量も増大することから,オキシ水酸化物からなる多孔質層は十分な電気伝導性を示すことが示唆された。
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