本研究においては、新規な電解質化学種を用いてアルミニウムをアノード酸化することにより、ポーラスアルミナのナノ構造を最適設計し、高い耐食性をもつアルミニウム材料の創製に挑戦することを目的とした。本年度の研究では、これまでの研究により見出した新規なポーラスアルミナ形成法を用い、塩化物環境中および酸性・塩基性環境中において良好な耐食性をもつ不動態皮膜形成アルミニウム材料の作製を試みた。本年度の研究により得られた主要な知見は、以下のとおりである。 (1)ポーラスアルミナの底部バリヤー層が厚いほど、電解質アニオンを含まない純アルミナ層の領域が多いほど、酸性・塩基性環境中における耐食性が高い。四ホウ酸ナトリウムを用いたアノード酸化により、高い耐食性をもつポーラスアルミナが形成できる可能性を見出した。 (2)メタホウ酸を用いた陽極酸化により、底部バリヤー層が極めて平滑なポーラスアルミナが生成する。また、生成するポーラス構造の細孔直径は極めて小さく、従来の生成法則に当てはまらない。これらは、従来知られているケラーハンターロビンソンモデルとは異なる新規なナノ構造であり、耐食性の向上が期待できる。 (3)電解エッチングとアノード酸化、自己組織化単分子膜コーティングを融合したプロセスによってアルミニウムを超撥水・超撥油化することに成功した。この超撥水・超撥油アルミニウムは、塩化物環境中において高い耐食性をもつことを明らかにした。
|