研究課題/領域番号 |
19H02473
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宮本 吾郎 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (60451621)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 相変態 / エネルギー散逸 / 偏析 / 三次元アトムプローブ / 界面整合性 / ソリュートドラッグ |
研究実績の概要 |
本年度は昨年度まで調査してきたフェライト/オーステナイト界面に偏析する傾向が強く、フェライト変態速度を著しく遅延させることが知られているMoに加えて,偏析傾向は強いながらもMoとは異なりγを強く安定化させるMn添加がフェライト/オーステナイト界面移動に及ぼす影響を調査した。 その結果,Moは大きなエネルギー散逸を生じさせるが界面移動速度が遅くなるとエネルギー散逸は消失するのに対して,Mnは遅い界面移動速度においても大きなエネルギー散逸が残存することを明らかとした.このエネルギー散逸は,NPLEモデルで予想されるMnスパイク生成に消費されるエネルギーとよく一致する. さらに,これまでMoで見られていたように,Mnでも非整合界面でのみ濃化が見られ,整合界面では濃化が見られないことから,界面濃化に及ぼす界面の整合性の影響は大きいことを明確にした.一方,整合な界面と非整合な界面に挟まれる粒界フェライトにおいては,両界面のエネルギー散逸には差が見られないことから,フェライト中の高い炭素の拡散係数によって両界面の炭素の化学ポテンシャル差が消失したものと考えられる. 以上の実験結果を,昨年度までに構築した非定常ソリュートドラッグモデルに適用することで,適切な界面厚さと界面拡散係数、偏析エネルギーを仮定すれば、実験結果を再現することを示した. 二年度目までに得られた成果により,元素の偏析に加えて界面における局所分配もエネルギー散逸を引き起こすことが明確になった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年初頭に,共同研究先であるNIMSを訪問して実験を実施する予定であったが,緊急事態宣言によって実験ができる状況ではなくなってしまったため,予定していた出張と実験を2022年度に実施するよう予定を変更し,実験に必要な消耗品や施設使用料,旅費を次年度に繰り越すこととした.その結果,予定していた実験を2022年度に遂行することができたため.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに構築した手法をFe-Ni-C合金の相変態に適用するとともに,粒界液相モデルを異相界面に展開することで,異相界面移動におけるエネルギー散逸を予測できるモデルを構築する。
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