本研究では、独自のアプローチに基づいてH終端化Si原子層シートを創製することを最終目標としている。これを実現するため本年度は、昨年度までに培った四つのプロセスから成るトータル・ウェットシーケンスの制御性をさらに高めると共に、Siバルクウエハから、SOI(Silicon on Insulator)ウエハを用いた実験へと移行し、原子層シートの形成と評価を行うべく、研究を遂行した。 昨年度までは、Si表面に連続的なナノ溝構造を安定的に得るには至っていなかった。これを実現するために本年度はまず、Agナノ細線を得るための還元・メッキ条件を探索した。そして、Agナノ細線の直下のSi表面を選択的にエッチングし、連続的なナノ溝構造を形成することにより、隣り合うテラス領域を分離・切断するプロセスに目途を付けた。 また電気化学的な観点から、ナノ溝構造の形成メカニズムを考察し、国内学会(精密工学会、応用物理学会)や国際会議(International Conference on Precision Engineering; ICPE)を通して発信した。 次に、SOIウエハに微傾斜角を形成するためのウェットエッチングの環境を整備した。そして、エッチング条件と微傾斜角の関係を明らかにした上で、SOIウエハ表面にステップ/テラス構造が形成できることを明らかにした。 最後に、シリコン酸化物(SiO2)上に形成したSi原子層の構造を含めて観察可能な、非接触原子間力顕微鏡システムの開発を進め、テスト試料を用いた性能評価を行った。
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