研究実績の概要 |
社会資本鋼構造物は腐食しやすく、SDGsの強靭なインフラ構築のためにもそれらを防食し長期に使用することが重要である。鋼材の腐食で「鉄さび」を生じるが、鉄さびが還元されると腐食が加速すると考えられる。本研究は鉄さび中に非鉄金属イオンを導入することで還元されにくいさびを育成し腐食を抑制することを指向しており、社会資本の長寿命化に資する新規な防食法の基礎を作る点で重要なテーマであると考える。今年度の研究実績を報告する。 ①非鉄金属イオンを添加した塗料による防食性評価:鋼構造物の長寿命化に資する新規な防食法の基礎を研究する観点から、Ca, Ba、Alのカチオンおよび硫酸イオンを添加した塗膜を鋼材に塗布し、その防食挙動を調査した。その結果、それらの非鉄金属イオンにより鋼材表面に生成するさび層が安定な構造に変化するとともに、Caの炭酸塩やCa, Baの硫酸塩が生成し、それらが極めて難溶であり高い安定性を有することにより、カソード反応速度に加えてアノード反応速度が大きく低下し、塗膜の防食性が著しく高まることがわかった。 ②非鉄金属イオン含有水溶液中におけるさび層のカソード還元挙動:Ni, Al, Naイオンに加え、今年度はZnイオンを含む水溶液中で大気暴露によりさび層を有する鋼材をカソード還元した。その結果、Ni,Alイオンを含有した場合には還元にともない生成するマグネタイトが酸素還元を抑制することにより鋼材の腐食を抑制するが、Znイオンを含む場合はγ-FeOOHがマグネタイトに還元されること自体も抑制され、さびの還元抑制によりさび層に高い防食性を与える可能性が示唆された。 今後、これらの知見を基に、さび層の特性を制御する防食技術への展開が可能になる。
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