研究課題/領域番号 |
19H02483
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
本塚 智 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30585089)
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研究分担者 |
佐藤 尚 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50402649)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 集合組織 / 再結晶 / 層状化合物 |
研究実績の概要 |
一般に、金属の再結晶の駆動力はひずみエネルギー、粒界エネルギー、表面エネルギーの三つがあると考えられている。本研究では、第四の再結晶の駆動力として、金属表面に付着した物質と金属表面が形成する界面におけるエネルギー、すなわち接触界面エネルギーの存在を明らかにすることが目的であった。 研究の結果、鉄粒子に付着した層状化合物が影響をもたらす再結晶過程は、一時再結晶ではなく、二次、もしくは三次再結晶である可能性が示された。これは中性子線回折による分析の結果、層状化合物が集合組織に影響を及ぼす段階が、ひずみの減少する段階ではなく、ひずみが減少しきってから現れたためである。すなわち、層状化合物の効果は、ひずみエネルギー以外の駆動力で進行する再結晶過程に作用していることを示しており、このことから二次、もしくは三次再結晶段階で層状化合物が重要な役割を果たしていることが示された。 昨年度は、高温下におけるin-situEBSDによる分析方法の確立が課題であったが、本年度は試料の作成方法の微調整(試料厚みの精密調整や事前熱処理方法の工夫)によって成功裏に分析を実行できた。また、中性子線回折測定における課題として、測定用の圧粉試料の配向と成形圧にトレードオフの関係があり、成形圧を高めすぎると集合組織が変化してしまう可能性が懸念されたが、この可能性について実験的に検討を行い、成形圧を高めても集合組織自体には影響が現れないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中性子線回折測定およびin-situEBSDによる分析を予定通り実施することができた。中性子線回折測定では、層状化合物が鉄粒子内部に固溶していることが明らかになり、またひずみと集合組織の性質を示す極密度の関係、これらと熱処理温度の関係が解明された。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究から、層状化合物がどのように再結晶過程に影響を与えるかをおおむね明らかにすることができた。次の段階として、層状化合物は再結晶過程の間にどのようにふるまうのか、これを明らかにする。具体的にはXPSおよびTEMによる層状化合物/鉄粒子界面構造の解明を推進する。
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