研究実績の概要 |
一般に、金属の再結晶の駆動力はひずみエネルギー、粒界エネルギー、表面エネルギーの三つがあると考えられている。本研究では、第四の再結晶の駆動力として、金属表面に付着した物質と金属表面が形成する界面におけるエネルギー、すなわち接触界面エネルギーの存在を明らかにすることが目的であった。 前年度までの研究から、鉄粒子に付着した層状化合物が影響をもたらす再結晶過程は、一時再結晶ではなく、三次再結晶である可能性が示された。一般に、結晶粒径より薄い金属においては、一時再結晶粒は金属の厚みの2,3倍になることが知られているが、これが8倍以上あることが判明したためである。そこで、三次再結晶の発現を念頭に研究を進めた。 具体的には、鉱物油中および黒鉛や窒化ホウ素などの層状化合物とともに粉砕された偏平金属粒子の熱処理後の表面を観察した。その結果、鉄粒子表面に、熱処理によって生成するサーマルグルーブの深さが、層状化合物とともに粉砕された鉄粒子表面では浅くなることが明らかとなった。サーマルグルーブの深さは、粒界エネルギと表面エネルギの比で決まる(W. W. Mulllins, Acta Metallurgica, 6, 414, 1957)。従って、表面エネルギが鉄粒子表面に付着する物質によって変化することが見いだされた。すなわち、接触界面エネルギーが存在し、このエネルギーは鉄粒子表面に付着する物質によって制御できることが示され、本研究の目的は達成された。
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