研究課題/領域番号 |
19H02484
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
且井 宏和 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (70610202)
|
研究分担者 |
近藤 直樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 上級主任研究員 (50357050)
原田 勝可 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 客員教授 (60552726)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 化学気相析出 / レーザー / ジルコニウム炭窒化物 / 炭窒化ホウ素 / コーティング / 高速成膜 / 複合材 |
研究実績の概要 |
本研究は、超高融点ホウ化物系複合材の高速化学気相成長により卓越した耐酸化性を有する超耐熱セラミックスコーティング層の開発を目的とする。昨年度にレーザーを援用した化学気相析出(CVD)により遷移金属基非酸化物やホウ化物、および炭化ケイ素の高速コーティングに関する要素技術を構築し、本年度はこれらコーティング層の微細構造や組成を明らかにするとともに遷移金属系ホウ化物の合成や炭化ケイ素との複合化を進めた。具体的には原料にテトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(Zr(NEtMe)4)を用いたZr炭窒化物の気相成長と、テトラキスジメチルアミノジボロン((NMe2)4B2)を用いた炭窒化ボロンの気相成長を組み合わせZr系ホウ化物の気相成長を試み、Zrおよびホウ素を含む非酸化物層が気相成長することが分かった。しかしながら、Zr組成は低く、炭窒化ホウ素を主成分とするコーティング層であったため、更なる気相成長条件の探索により組成制御を必要とした。また、複数のホウ素前駆体を検証し、Zr系ホウ化物の気相成長ではホウ素や炭素が過剰となるため、ホウ素およびZr前駆体ガスの輸送条件・機構の最適化が必要であることが分かった。一方、環状シラン系有機化合物を原料との組み合わせによる複合層の成膜技術開発においては、昨年度に合成したZr炭窒化物とSiCの複合層に対して透過型電子顕微鏡観察や光電子分光分析を進めた結果、結晶性のZr炭窒化物とSiCが数十nm以下で微細に分散した構造であることが分かり、従来の焼結プロセスで作製できない気相成長特有のナノコンポジット構造が形成されることを明らかにした。このように本年度は、Zr系ホウ化物やや炭化ケイ素との複合層に関して高温酸化特性評価に向けたコーティング層の成膜技術基盤を構築した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遷移金属基非酸化物やホウ化物系コーティング層の成膜技術を確立し、得られる構造や化学結合状態・組成の詳細を明らかにするとともに、炭化ケイ素との複合化も進展したが、遷移金属基ホウ化物の気相成長条件探索が十分に進まなかった点は当初の計画通りよりも遅れている。ただし、Zr系ホウ化物の気相成長条件の探索・最適化においてはおおよその目途はついており、本年度に計画されていた高温酸化特性評価に資するコーティング層の合成は来年度早々に実現できるものと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度までに、Zrおよびホウ素系の有機化合物原料を用いたレーザーCVD法からZr炭窒化物、炭窒化ホウ素、Zr-ホウ素系非酸化物層、およびこれらと炭化ケイ素との複合層の気相成長の要素技術を構築し、その微細構造や組成評価を進めてきた。これにより得られた知見・技術を基盤として令和3年度は、Zr系ホウ化物と複合層をはじめとする高温酸化特性評価に資するコーティング層の合成を着実に進める。原料供給条件や成膜温度、レーザー照射条件、炉内圧力などのプロセスパラメータとコーティング層の構造や組成と相関を精査し、特にZr組成を高めたコーティング層の創出を年度前半に実現する。得られるコーティング層に対して高強度レーザー照射による雰囲気制御下での高温加熱試験を実施し、酸化雰囲気下での健全性を評価する。得られる知見は成膜プロセスパラメータや膜構造へとフィードバックし、コーティング層の耐高温酸化性に対する支配因子の検討と特性向上を図る。Zrに代わりTaやHfなどの他の遷移金属系ホウ化物の気相成長も試みることで耐高温酸化特性に優れる超高融点遷移金属系ホウ化物コーティングの創出に多方面からアプローチする。
|