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2019 年度 実績報告書

超塑性Ti合金への超弾性特性付与による薄板一体型・弾性展開構造の創製

研究課題

研究課題/領域番号 19H02485
研究機関国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構

研究代表者

佐藤 英一  国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (40178710)

研究分担者 竹内 伸介  国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (20353419)
戸部 裕史  国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (40743886)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードチタン合金 / 形状記憶 / 超弾性 / ロケットモータ / ノズル / 展開構造
研究実績の概要

Ti-4.5Al-3V-2Fe-2Mo合金(SP-700)は、適切な熱処理を施すことにより超弾性特性を示すことができ、これを上段ロケットノズルの折り畳み展開構造に適用できることを目的とした。
(1) 多段階熱処理条件検討による超弾性改善を図った。850℃-10分焼鈍と875℃-10分溶体化により,溶体化後も母材部において{001}〈11-0〉β集合組織が保持され,母材部超弾性の等方性が保たれた。
(2) TIG溶接を行うと、冷却速度が低く延性が失われた溶接組織が得られたが、これに (1)の溶体化を施すことで、粒界α相が消え延性が回復し,超弾性化可能となった。
(3) マイクロプラズマ溶接を行うと、冷却速度が大きいため溶接組織はマルテンサイト単相となり,変態温度調整のみで超弾性化が可能であった。
(4) SP-700超弾性ノズルの実現性を示すため、SP-700板材ロケットノズル延長部の実物大模型を試作し、折り畳み・展開試験を実施した。冷間圧延材を約250μmまで研削した扇形パーツをマイクロプラズマ溶接してノズル形状とし、真空油冷炉を用いて熱処理を施し,ノズル全体の超弾性化を図った。この時溶接組織はマルテンサイト単相を示した為溶体化処理は行わず,変態温度調整を目的とした焼鈍・時効のみを施した。その後、折り畳み・展開試験を実施した。溶接の段階で溶接部に2か所穴が開いてしまい, 展開後この周辺に残留ひずみが一部観察されたが,それ以外のノズル全体には残留歪みによる大きな変形は目視されなかった。これにより、超弾性展開ノズルの実現性を概ね示すことができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の研究項目の、1.超弾性付与熱処理、2.超塑性成形による集合組織の弱化およびその後の超弾性特性 については終了することができた。3.超弾性展開ノズルの模型試作についても、1回目の試作、試験が完了し、概ね実現性を示すことができた。

今後の研究の推進方策

大型展開モデルの試作・展開試験 昨年度までの研究で、当初の研究項目の、1.超弾性付与熱処理、2.超塑性成形による集合組織の弱化およびその後の超弾性特性 については終 了し、今年度は、3.超弾性展開ノズルの模型試作を昨年度に引き続き継続実施する。
3-1.大型板材の薄板化の検討(戸部) 昨年度の一部試作で、チタン板材の厚み250μmまでの研削行程における残留ひずみが、次工程の熱処理での歪みを誘起していることが判明した ので、中間焼鈍を加えることによる残留ひずみの低減を実施する。
3-2.ひずみの小さな熱処理条件の検討(戸部) 昨年度の一部試作で、個別の板段階とノズル形状に溶接した段階での熱処理を行った結果、熱処理によるゆがみは後者の方が少ないという結果 が得られた。今年度は、熱処理治具の検討等を行い、歪みの小さな熱処理プロセスを開発する。
3-3. 折りたたみ展開試験(佐藤・戸部・竹内) 製作したモデルの折りたたみ・展開試験を実施する。その際、画像計測による形状測定を行い、次項目に解析と定量的な比較検討する。
3-4. 展開プロセスにおける変態・変形解析(竹内・佐藤) 変態による非弾性変形を取り入れた折りたたみ展開プロセスの数値解析を行い、前項の折りたたみ展開試験結果を定量的に評価する。局所的に ひずみの大きな箇所の変態挙動を、実際の組織と照らし合わせる。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Deployable Rocket Nozzle Utilizing Superelastic Titanium Alloy Sheet2020

    • 著者名/発表者名
      Hirobumi Tobe, Yuichi Matsuki, Shinsuke Takeuchi, Eiichi Sato
    • 雑誌名

      Materials Transactions

      巻: 61 ページ: 68-71

    • DOI

      10.2320/matertrans.MT-MJ2019009

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Ti-4.5Al-3V-2Fe-2Mo合金の超弾性特性改善に向けた熱処理条件最適化2019

    • 著者名/発表者名
      大畑耕太,戸部裕史,佐藤英一
    • 学会等名
      日本金属学会2019年春期(第164回)大会
  • [学会発表] Ti-4.5Al-3V-2Fe-2Mo合金の集合組織と形状記憶特性に及ぼす多段階熱処理の影響2019

    • 著者名/発表者名
      大畑耕太,戸部裕史,佐藤英一
    • 学会等名
      軽金属学会2019年春期(第136回)大会
  • [学会発表] Ti-4.5Al-3V-2Fe-2Mo合金板材の母材部・溶接部の超弾性特性に及ぼす多段階熱処理の影響2019

    • 著者名/発表者名
      大畑耕太,戸部裕史,佐藤英一
    • 学会等名
      軽金属学会2019年秋期(第137回)大会
  • [学会発表] 上段ロケット展開ノズルへの応用に向けたTi-4.5Al-3V-2Fe-2Mo合金薄板溶接材の超弾性化2019

    • 著者名/発表者名
      大畑耕太, 戸部裕史,佐藤英一
    • 学会等名
      第35回宇宙構造・材料シンポジウム

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公開日: 2021-01-27  

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