研究課題/領域番号 |
19H02489
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
加藤 知香 静岡大学, 理学部, 准教授 (00360214)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ポリオキソメタレート / 白金 / 焼成処理 / コロイド粒子 / 白金ナノ粒子 / 凝集抑制 / 光触媒 / 水素生成 |
研究実績の概要 |
本年度は,800℃以上の高温焼成処理下で最も白金粒子の凝集抑制効果が認められたリン中心二核白金種配位ケギン型ポリオキソタングステートのセシウム塩について,空気中,700,800,900℃の温度で5時間焼成処理することで得られた新物質の組成,構造,電子状態等について粉末X線回折分析,固体核磁気共鳴分析,透過型電子顕微鏡観察,元素分析,フーリエ変換赤外分光分析,拡散反射紫外可視分光分析,X線光電子分光分析等を用いて検討した。 その結果,いずれの焼成温度でも数ナノオーダーの白金ナノ粒子が生成していることや,タングステート部位の組成がCs3PW12O40であることを確認した。一方,リン中心二核白金種配位ケギン型ポリオキソタングステートのテトラメチルアンモニウム塩やケイ素中心のケギン型二核白金種配位ポリオキソタングステートのセシウム塩,ケギン型無置換ポリオキソタングステートの白金塩を同条件下で焼成処理した場合には数十~数百ナノオーダーにまで白金粒子が粗大化しており,リン中心二核白金種配位ケギン型ポリオキソタングステートセシウム塩を焼成処理した場合にのみ優れた凝集抑制効果が観測されると結論した。 本焼成処理により得られた新物質を光触媒として用い,トリエタノールアミン水溶液中,エオシンY,酸化チタン,ケギン型アルミニウム一置換ポリオキソメタレートを共存させた系に440 nm以上の可視光を照射したときの光触媒活性評価を行った。その結果,いずれの温度で焼成処理した場合も水素発生量は焼成前に比べて高い値を示した。反応速度は光照射時間とともに低下したが,エオシンYを再添加することで回復することを確認した。また,光照射後も白金粒径に変化は見られず,明確な凝集は進行していなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,800℃以上の高温焼成処理下で最も白金粒子の凝集抑制効果が認められたリン中心二核白金種配位ケギン型ポリオキソタングステートのセシウム塩について,空気中,700,800,900℃の温度で5時間焼成処理することで得られた新物質の組成,構造,電子状態および光触媒機能について明らかにした。リン中心二核白金種配位ケギン型ポリオキソタングステートの白金含有量は約11wt%と高白金量であるにもかかわらず,800℃で100時間焼成処理後も白金粒子の粗大化が確認されなかったことから,本白金化合物の驚異的な凝集抑制効果が確認できた。長時間の焼成処理による失活も観測されなかった。 現在は,白金サイトの配向制御,白金ナノ粒子のさらなる凝集抑制効果の発現,光耐久性の向上に加え,白金触媒の回収・リサイクルも視野に,リン中心二核白金種配位ケギン型ポリオキソタングステートセシウム塩の固体表面への担持技術の開発を進めている。担持条件や焼成条件が白金表面構造に及ぼす影響についても詳細な検討を進めており,本年度の研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,リン中心二核白金種配位ケギン型ポリオキソタングステートセシウム塩の半導体表面への静電的担持技術を確立する。得られた固体の白金およびタングステートの表面構造は,粉末X線回折分析,固体核磁気共鳴分析,透過型電子顕微鏡観察,元素分析,フーリエ変換赤外分光分析,拡散反射紫外可視分光分析,X線光電子分光分析等を用いて解明する。光触媒活性や光耐久性の調査に加え,白金およびタングステート部材の回収・リサイクル技術の開発も進める。 単結晶X線構造解析,元素分析,熱分析,溶液核磁気共鳴分析,フーリエ変換赤外分光分析,紫外可視分光分析,コールドスプレーイオン化質量分析等により組成および分子構造が確定した単核および二核パラジウム化合物についても光触媒活性・光耐久性評価実験を進める。種々の雰囲気下での加熱処理も試み,一つの欠損サイトへのパラジウム種の配位が物性,構造,機能に与える影響について明らかにする。
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