研究課題/領域番号 |
19H02490
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北田 敦 京都大学, 工学研究科, 助教 (30636254)
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研究分担者 |
邑瀬 邦明 京都大学, 工学研究科, 教授 (30283633)
深見 一弘 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60452322)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 電析 / グライム / アルミニウム / ナノチューブ / クラウンエーテル / ヒドロニウム / hydrate melt / 塩化カルシウム |
研究実績の概要 |
本年度はグライム系室温アルミニウム電析について、溶媒の最適化と添加剤効果、ならびに合金形成の可能性を調査した。溶媒と溶質の比率変化によって、得られる電析皮膜の外観、ミクロ形態ならびに硬度が改善することがわかった。添加剤(複合化材料)として多層カーボンナノチューブを用いたところ、Alめっきとの複合化により硬度が増大した。また、複合化のためのナノチューブ分散には、ナノチューブの酸処理による親水化が必須であることもわかった。鉄との合金化を試みたが、合金は形成しなかった。しかし、非常に平滑で光沢のある鉄薄膜を得ることに成功した。これは従来の水溶液や非水溶液では得ることが困難であったものである。水素発生が起こらない環境であるためだけでなく、電流時間変化の解析から理想的な自発的核発生メカニズムが起こっているために、このような光沢鉄めっきが可能になったと考察した。
直鎖構造のグライムを環状にしたクラウンエーテルを用いて新しいプロトン伝導体を合成し、その物性を調べた。H3O+(ヒドロニウム)イオンをクラウンエーテルに配位させた「ヒドロニウム溶媒和イオン液体」では、プロトンの高速伝導が観測されているが、クラウンエーテル比率を2倍とした場合には高速伝導が阻害されるという意外な結果を得た。2つの隣り合うクラウンエーテル間での局所的プロトン交換の可能性を提案した。
申請者が推進する電析研究のキーワードである「安価・安全・室温」に合致する、hydrate meltを用いる電析技術を検討した。塩化カルシウム6水和物は室温で溶融するhydrate melt(水和溶融塩)である。自由水がほとんど存在しないため、従来よりも優れた溶解度や電気化学的安定性を有する。hydrate meltを用いることで、平滑銀めっきと3価クロムめっきというめっき無害化技術を考案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度はグライム系室温アルミニウム電析について、溶媒の最適化と添加剤効果、ならびに合金形成の可能性を調査した。溶媒の最適化はほぼ完了し、平滑な皮膜を得ることに成功している。添加剤効果についてはビッカース硬度2 GPaを超える複合材料が得られ、従来の粉末冶金法の硬度を上回ることに成功した。鉄との合金化を試みたが、合金は形成しなかった。しかし、非常に平滑で光沢のある鉄薄膜を得ることに成功した。これは従来の水溶液や非水溶液では得ることが困難であったものである。水素発生が起こらない環境であるためだけでなく、電流時間変化の解析から理想的な自発的核発生メカニズムが起こっていることがわかった。光沢鉄薄膜については論文査読中である。以上のように、当初の計画項目を着実に実行し、新たな知見を得るに至っている。
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今後の研究の推進方策 |
溶媒の最適化に関する研究では、平滑性と緻密性が高いアルミニウム皮膜が得られているので、耐食性の試験を行う。耐食性がよければ、これまでの銅基板から基板を変更し、耐食性の付与に関する研究にシフトする。 合金電析について、アルミニウムと電位の近い金属との合金化を図るほか、鉄での知見から3d遷移金属の平滑めっきが可能であるかを調査する。
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