研究課題/領域番号 |
19H02491
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
稲富 裕光 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (50249934)
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研究分担者 |
鵜殿 治彦 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (10282279)
VELU NIRMALKUMAR 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (60804482)
岡野 泰則 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (90204007)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | InGaSb結晶 / 外力場印加 / その場観察 / 3次元分析 / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
宇宙実験と同じ組成であるIn0.03Ga0.97SbおよびIn0.11Ga0.89Sb結晶を対象として、以下の4つの研究を実施した。 【研究A】外力場なし条件での温度勾配徐冷法による結晶育成: 温度勾配徐冷法に基づいて、成長界面の温度を一定に保つよう試料の冷却速度を制御して結晶を育成した。【研究B】結晶育成中の固液界面形状のその場観察: 結晶育成過程において一定周期で熱パルスを加えることでドーパントであるTe濃度縞を意図的に成長結晶中に形成させ、成長後の結晶をエッチングすることで縞の形状から固液界面形状と界面位置、縞の間隔から成長速度を測定した。それらの縞の間隔から求めた成長速度と同じになるように、【研究A】にて試料引き下げ速度を制御した。【研究C】試料中の組織・組成・欠陥、光学的・電気的特性の3次元分布計測: 【研究A】で得られた試料を分析した。試料中の組織・組成・欠陥、光学的・電気的特性を評価し、結晶育成条件に反映した。【研究D】微小重力環境における結晶成長過程の大規模数値シミュレーション: 成長中の固液界面形状・位置、そして成長速度については数値計算を実施した。その際に、固液界面における境界条件として結晶の面異方性を組み込んだ。 上記の研究を通して、多成分合金における点欠陥や組成偏析などの構造的不完全性を実験的に観察することで電子・フォノン輸送特性への影響を明らかにした。そして、III-V族三元合金であるInGaSbの熱電特性は点欠陥と組成偏析の存在によって改善された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年2月までに事前準備、試料分析方法の検討、原料結晶の作製、試料アンプル作製、結晶成長実験、試料分析を行い、令和2年3月までに成果の取りまとめを行う予定であった。しかし、令和元年12月に結晶成長実験を実施した結果、当初の想定に反して、宇宙実験に比べて試料中の温度分布が急峻となったことにより育成結晶の多結晶化が促進されることが判明した。 研究遂行上、試料中の温度分布の精密制御が不可欠なため計画を見直し加熱炉の改造を追加して、結晶成長実験を再度実施する必要が生じた。そのため、2019年度予算の一部を2020年度に繰越して強磁場用加熱ヒーターを新たに製作し、それを既存の加熱炉に組み込んで試料中の温度分布を改善し、結晶成長実験を再度実施した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、宇宙実験と同じ組成であるIn0.03Ga0.97SbおよびIn0.11Ga0.89Sb結晶を対象として、以下の4つの研究を実施する。 【研究A】2019年度と同様の温度勾配徐冷法に基づいて、成長界面の温度を一定に保つよう試料の冷却速度を制御して強磁場中で結晶を育成する。 【研究B】2019年度と同様に、熱パルス法による成長縞の形状から固液界面形状と界面位置、縞の間隔から成長速度を測定する。それらの縞の間隔から求めた成長速度と同じになるように、【研究A】にて試料引き下げ速度を制御する。 【研究C】【研究A】で得られた試料および宇宙実験試料を細かく切断し個々に分析することで、試料中の組織・組成・欠陥、光学的・電気的特性の3次元分布を得て結晶の品質評価を行い、結晶育成条件に反映する。 【研究D】2019年度の成果を踏まえ、強磁場印加条件での結晶成長過程の大規模数値シミュレーションを行う。
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