研究課題/領域番号 |
19H02493
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
塚田 隆夫 東北大学, 工学研究科, 教授 (10171969)
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研究分担者 |
福山 博之 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (40252259)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多元系合金 / 融体内対流 / 相分離構造 / 過冷却凝固 / プロセス-構造相関 |
研究実績の概要 |
(1) Cu基合金の過冷却凝固実験: 静磁場重畳電磁浮遊装置を使用し,直径5 mmのCu80Fe20合金試料の過冷却凝固時に発現する相分離構造に及ぼす静磁場強度及び冷却速度の影響を検討した.結果として,冷却速度の大小にかかわらず,ある静磁場強度を境に融体内の電磁流体力学的(MHD)対流が乱流から層流に遷移することにより,相分離構造が大きく変化することが確認された。また,比較的高磁場強度,特に1.5~2.5 Tにおいて,相分離Fe-rich液滴平均径の冷却速度依存性が見られた.これは,層流域での相分離では,冷却速度が大きいほど,相分離Fe-rich相の合体・成長がより早い段階で凝固により抑制されるためである. (2) 相分離構造の非接触・非破壊三次元測定技術の開発: 昨年度実施したCu80Co20とCu80Fe20合金の凝固試料の中性子CT像に基づき両者の3次元相分離構造の比較を行った.比較的低磁場では,両者ともに小さなCo-rich相,Fe-rich相が多数分散した構造を示すが,高磁場(例えば,3 T)ではCu80Co20合金はCo-rich相が静磁場方向に伸長した楕円形の構造を取るのに対して,Cu80Fe20合金ではFe-rich相が球状に近い構造を取った.この相分離構造の違いは,それぞれの合金の物性値,特に磁化率と界面張力の値の違いによるものと考えている. (3) 電磁浮遊液滴内の熱流動場及び相分離シミュレーション: 前年度構築したOpenFOAMを利用した電磁浮遊液滴内対流の直接数値シミュレーション(DNS)モデルに,Cahn-Hilliard方程式に基づく相分離シミュレーションモデル(Phase field法)を組み込み,モデルの妥当性の検証を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実施項目として, (1) 多元系合金の凝固実験,(2) 相分離構造の非接触非破壊3次元測定,(3) 電磁浮遊液滴内の熱流動場及び相分離シミュレーションを挙げた.(1)については,Cu80Fe20合金を対象として,静磁場強度とともに冷却速度の影響を検討し,さらに既に実施済みのCu80Co20合金の結果を含めハルトマン数の比と相分離液滴径との関係を示した.(2)については,Cu80Co20とCu80Fe20合金の中性子CT結果から,両者の3次元相分離構造,特に高磁場における相違を議論した.また,(3)については,計画に従い,前年度構築した電磁浮遊液滴内対流の直接数値シミュレーション(DNS)モデルに,相分離シミュレーションモデル(Phase field法)を組み込むことができた.以上を考慮し,現在までの進捗状況として「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
(1) 多元系合金の凝固実験: 前年度に引き続き,種々のCu基合金を対象として,組成,冷却速度,過冷却度,さらには印加静磁場強度を変更し,静磁場重畳電磁浮遊装置を用いた冷却・凝固実験を行う.この際,凝固試料内の相分離構造は,主に凝固試料断面の走査型電子顕微鏡(SEM)により観察する.得られた結果に基づき,プロセス条件と相分離構造との相関を検討する. (2) 相分離構造の非接触非破壊3次元測定: 異なるCu基合金を対象とした中性子CTによる相分離構造の測定結果を比較し,Cu基合金の相分離構造の熱物性,磁気物性依存性を検討する. (3) 電磁浮遊液滴内の熱流動場及び相分離シミュレーション: OpenFOAMを利用した電磁浮遊液滴内対流の直接数値シミュレーション(DNS)モデルに,Cahn-Hilliard方程式に基づく相分離シミュレーションモデル(Phase field法)を組み込み,対流/相分離シミュレーションモデルを構築する.以上の数値シミュレーションモデルを用いて,実験と同条件における解析を実施し,実験結果と比較するとともに,融体内対流の強度・構造,局所せん断力,乱流エネルギー等と相分離構造との相関を考察する.
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