1)静磁場印加電磁浮遊技術を利用した過冷却凝固実験を通して,Cu80Fe20合金のFe-rich相の平均粒径に及ぼす静磁場強度の影響に関するデータの充実を図った.得られたCu-Fe合金のFe-rich相の平均粒径と既往の研究のCu80Co20合金のCo-rich相の平均粒径をHa数の比で整理した.ここで,Ha数比は直流と交流磁場起因の電磁力の比として表される無次元数である.結果として,Ha数比の増加とともに各minor相の平均粒径が増大し,さらに平均粒径が急激に増大し始めるHa数比はCu-Fe合金,Cu-Co合金でほぼ一致することがわかった. 2)中性子CTによるCu80Co20合金とCu80Fe20合金の3次元相分離構造を比較した.静磁場強度が小さい時にはいずれの合金においてもminor相が多数分散した構造であったが,静磁場強度が大きい場合,Cu-Co合金のCo-rich相は静磁場方向に伸びた楕円形,Cu-Fe合金のFe-rich相は球形に近い形状になった.この構造の違いを考察するために,相分離したFe-rich相およびCo-rich相の形状を楕円体と仮定し,そのアスペクト比とmagnetic Bond数との関係を一様静磁場下の強磁性楕円体液滴形状に関する解析解と比較したところ,実験値と理論値の傾向は概ね一致し,高磁場における両系のminor相の形状の違いは,体積磁化率の違いに起因することがわかった. 3)単純せん断場でのCu基合金の相分離過程を計算するために,移流を考慮したCahn-Hilliard方程式に基づく相分離シミュレーション (Phase field法による)を行った.ここで,自由エネルギー関数は,正則溶液を仮定し,Cu-Co合金のバイノーダル線から決定した.結果として,相分離構造に及ぼすせん断速度,温度等の影響を明らかにした.
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