研究課題/領域番号 |
19H02495
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
田村 和弘 金沢大学, 機械工学系, 教授 (20143878)
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研究分担者 |
多田 薫 金沢大学, 機械工学系, 助教 (20190811)
内田 博久 金沢大学, フロンティア工学系, 教授 (70313294)
春木 将司 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (90432682)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超臨界二酸化炭素 / ナノダイヤモンド / ナノコンポジット / 表面化学修飾 / 高圧域溶解度 |
研究実績の概要 |
超臨界CO2を用いて,バイオマーカーとして利用が期待されるナノダイヤモンド粒子表面に表面改質剤を化学修飾させ,分散性制御できるバイオナノコンポジットプリカーサの創製法の開発を目的とする。また,開発の重要課題となる超臨界CO2中での表面改質剤の溶解度測定とその推算法の開発及びナノダイヤモンド粒子表面での化学修飾反応機構について解明する。ナノダイヤモンド表面で,高級脂肪酸により表面水酸基とエステル結合を形成させることで,ナノダイヤモンド表面を化学修飾させる表面処理し,親水性ナノダイヤモンド表面を疎水化することで,有機溶媒中で安定的な分散性を大きく改善することができる。そのためには,ナノダイヤモンド粒子表面での化学反応機構の解明及びナノ材料の分散性制御の確立が必要不可欠となる。そのため以下の実施項目を行う。①本技術により得られるナノダイヤモンド表面修飾量に及ぼす操作因子(溶質溶解温度,溶質溶解圧力,反応時間)及び界面改質剤化学反応種の違いによる影響を系統的に調査し,粒子表面での化学反応機構の解明に繋がる基礎データの蓄積を行い,本技術による粒子表面での化学反応機構及びナノダイヤモンド材料の分散性制御技術の設計指針を明らかにする。②化学修飾に用いる表面改質剤の溶解度の測定と溶解度モデルの開発本技術によるナノ粒子の表面修飾量は,粒子表面での表面改質剤濃度が化学反応機構に大きく影響を与える。しかし,表面改質剤の親油性基の違いによる溶解度への影響についての報告例(特に高圧力範囲域)はない。そこで,親油性基の長さの異なった種々の表面改質剤を用いて,超臨界CO2中での表面改質剤の溶解度を系統的に調査する。さらに,超臨界CO2中での表面改質剤の溶解度の推算が可能なモデルの開発を行う。本研究で得られる成果は,超臨界CO2を用いたバイオナノコンポジットの創製技術とその分散性制御設計の確立につながる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本技術におけるナノダイヤモンド表面化学修飾に及ぼす操作因子の影響を解明するため,本技術で得られるナノダイヤモンド表面修飾量と操作因子(溶質溶解温度,溶質溶解圧力,反応時間)及び界面改質剤化学反応種の違いによる影響を系統的に調査し,粒子表面での化学反応機構の解明に繋がる基礎データの蓄積を行い,本技術による粒子表面での化学反応機構及びナノダイヤモンド材料の分散性制御技術の設計指針を明らかにする。そのために,ナノダイヤモンド表面化学修飾量測定装置を開発した。従来の測定条件範囲を拡大するために,圧ポンプと背圧弁を新たに購入し,装置改良を行った結果,温度範囲323-393K,圧力10-65MPaの操作条件で測定可能とすることができた。実験装置の改良後,表面改質剤として超臨界CO2に可溶する親油性の高級脂肪酸と,超臨界CO2中で粒子表面の水酸基やカルボキシル基とエステル化反応させ,ナノダイヤモンド粒子表面上でエステル化反応が温度,圧力変化に伴い,どのように進行しているか予備実験により確かめた。また,ナノ粒子の表面修飾量は,粒子表面での表面改質剤濃度が化学反応機構に大きく影響を与えるため,超臨界CO2中での表面改質剤の溶解度が基礎的知見として必要である。そのため,温度範囲323-393K,圧力10-100MPaの範囲で,溶解度を測定可能な装置を製作した。また,既往の測定値と比較・検定し,実験誤差範囲内で測定できることを明らかにし,新たな溶解度測定装置の開発に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
本技術により得られるナノダイヤモンド表面修飾量に及ぼす操作因子(溶質溶解温度,溶質溶解圧力,反応時間)及び界面改質剤化学反応種の違いによる影響を系統的に引き続き調査し,粒子表面での化学反応機構の解明に繋がる基礎データの蓄積を行い,本技術による粒子表面での化学反応機構及びナノダイヤモンド材料の分散性制御技術の設計指針を明らかにする。具体的実施項目は以下のとおりである。(1)表面改質剤として超臨界CO2に可溶する親油性の高級脂肪酸(CnHmCOOH, n=18-24)や高級アルコール(CnHmOH, n=18-24)と,超臨界CO2中で粒子表面の水酸基やカルボキシル基とエステル化反応させ,ナノダイヤモンド粒子表面上でエステル結合させる。そして,表面処理した粒子表面の修飾量と反応温度・圧力と修飾量の関係を解明し,ナノダイヤモンド粒子表面での反応機構を検討する。(2)新たに開発した流通式溶解度測定装置により,温度範囲323-393K,圧力10-100MPaの範囲での溶解度の測定を継続する。(3)溶解度推算モデルの開発と熱力学的解析を行い,高級脂肪酸や高級アルコールの炭素鎖数が変化したときの,溶解度変化を予測するための熱力学的モデルを新たに提案し,測定条件の範囲内外の溶解度データを正確に推算可能な手法の開発を行う。
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