研究実績の概要 |
本研究は独自に開発したガス導入アーク放電法により金属分散カーボンナノホーンを合成し、優れた水素吸蔵特性を導出するための合成条件を求めることが主な研究目的とする。この目的達成のために合成条を分散金属種を変化させ、かつ、金属の含有量を変化させて金属分散カーボンナノホーンを合成した。金属種にはFe, Ni, Zn, Zr, Ti, Alを使用した。金属種の選択には、実用化を想定してレアメタルを含有させずに比較的安価な種類を採用した。これらの金属種の中では、Tiが最も高い水素吸蔵特性を示した。それぞれの金属種において最適な金属含有量が存在し、Tiでは金属含有量12wt%程度のときに水素圧力0.95MPaの下で最大水素吸蔵量0.27wt%を示した。この水素吸蔵量は、金属分散カーボンナノホーンの賦活によって増大することが可能である。本研究では二酸化炭素-窒素混合ガス雰囲気で1000℃まで昇温することにより、上述のTi分散カーボンナノホーンの水素吸蔵量0.27wt%が0.5wt%近くまで上昇した。この傾向は他の金属種でも確認された。このCO2賦活により金属分散カーボンナノホーンの比表面積は約200m2/gからほぼ倍増するので、水素が到達できる有効金属面積が増大することが理由として考えられる。金属分散の水素吸蔵量増加の効果を起こす機構は水素スピルオーバー効果であると考察されるが、その機構解明のために半経験的分子軌道法計算を行った。この計算により、水素が金属-炭素の界面付近で解離するときの活性化エネルギーが減少することが明らかになった。
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