研究課題/領域番号 |
19H02500
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
荻 崇 広島大学, 工学研究科, 准教授 (30508809)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ナノ構造化微粒子 / 細孔制御 / 自己組織化 / エアロゾルプロセス / 熱移動特性 |
研究実績の概要 |
本研究では、革新的な熱移動制御材料の開発に向けた微粒子の高度ナノ構造化に関する研究を実施する。細孔径、細孔空間の規則性、空隙率が高度に制御されたナノ構造化微粒子(マクロポーラス微粒子や中空微粒子)を創製し、界面における熱移動特性の評価と制御を検討している。 2019年度は、研究初年度として、マクロポーラス微粒子のナノ構造の合成法の確立、高度化(細孔径、細孔分布、空隙率の制御)に取り組んだ。特に、噴霧法による酸化物粒子のマクロポーラス構造体粒子の合成、ゾルゲル法による中空シリカ粒子の合成を実施した。ここでは、代表的な研究成果を以下に示す。 1)ゾルゲル法による中空シリカ粒子とナノコンポジットフィルムの作製:異方性中空材料として六角板状中空シリカプレートの合成とその特性評価について検討した。六角板状ZnOプレートをテンプレートに用いることで六角板状中空シリカプレートの作製に成功し、反応時間の影響を調査することでシリカ膜の形成反応機構を明らかにした。中空シリカプレートを粒子含有量70%となるようポリマー中に複合させた時、その屈折率はポリマーのみの屈折率1.45から1.33まで低下した。 2)噴霧法によるマクロポーラスシリカ粒子合成実験:ポーラスシリカ微粒子を合成するため、TEOS、超純水、硝酸、PMMAを混合して原料溶液とし、噴霧熱分解法によりポーラスシリカ微粒子を合成した。種々、検討を実施した結果、PMMA/TEOS重量比を増加させていくにしたがって、ポーラス微粒子の割合も増加し、重量比1.2の場合にほぼ全ての粒子のポーラス化が可能となった。 上記を含めた研究成果は、10報の査読付きSCI国際雑誌にて発表した。これらの論文の一部は、バンドン工科大学、スラバヤ工科大学、復旦大学などと協力して実施した。また、その他として、解説2報、書籍1編、国内外の学会発表26件を達成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の2019度の計画は、細孔径、細孔空間の規則性、空隙率が高度に制御されたナノ構造化微粒子(マクロポーラス微粒子や中空微粒子)の合成プロセスおよびその設計指針を明らかにすることが目的であり、上記の成果概要でも示す通り、計画を概ね達成できたと判断している。特に、液相法(ゾルゲル法)による粒子合成では、粒子径、膜厚などの精密制御が可能となり、それらのポリマーとの複合化の手法も検討し、最適な条件が見つかりつつある。したがって、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上述するように、昨年度は、研究初年度として、マクロポーラス微粒子のナノ構造の高度化(細孔径、細孔分布、空隙率の制御)に取り組んだ。鋳型粒子の自己組織化を利用して、各種操作条件が、粒子構造や形態に及ぼす影響を実験的に明らかにした。中空粒子が大量かつ均一に合成できる可能性が示唆された一方で、マクロポーラス微粒子の粒子径、細孔径の制御、粒子構造の均質化、大量合成には課題が残った。そこで、2020年度は、マクロポーラス構造微粒子に着目し、高度な形態、構造制御および高収率、高生産合成を目指したプロセス開発を実施する。具体的には、(i)二流体ノズルを用いた火炎法によるマクロポーラス構造微粒子の合成、(ii)新規火炎法(管状火炎)法によるナノ構造化微粒子合成プロセスの開発、(iii)噴霧乾燥法によるマクロポーラス微粒子の合成、を検討し、各種の方法の操作条件が、微粒子の形態や構造に及ぼす影響を明らかにすることで、ナノ構造化微粒子の合成と高度制御技術の確立を目指す。初年度同様に、鋳型粒子にはこれまでポリスチレンラテックス(PSL)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、酸化亜鉛ナノ粒子(ZnO)などを適応する。材料には、本合成コンセプトの各種分野への応用を考慮して、シリカ、YAG:Ce、酸化亜鉛、セルロースナノファイバー、酸化鉄、酵母など用いる。鋳型粒子は、粒子径が揃っており、表面電位が制御された状態で用いる。特に、異なるサイズの鋳型粒子を用い、それに基づいて得られた100-500nmの細孔径を持つナノ構造化微粒子が、流体の混合状態、各種物性、特性へ及ぼす影響を明らかにする。
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