研究課題/領域番号 |
19H02502
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
野村 俊之 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00285305)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | バイオフィルム / 原子間力顕微鏡 / ノンケミカル洗浄 / マイクロバブル / 付着力 |
研究実績の概要 |
バイオフィルムが関係するトラブルには深刻な被害を及ぼすものが多いが、個々の問題に適切に対応できる技術は皆無である。本研究では、究極の低環境負荷型材料であるバブルの疎水性相互作用を利用して、簡便かつ安価な方法により装置内壁へのバイオフィルム形成の抑制を試みる。さらに、装置壁面のナノ粒子コーティングによる微生物の付着抑制、除去困難な付着微生物への薬剤を封入した生分解性キャリア粒子の選択的送達による付着微生物のピンポイント殺菌についても検討することを目的とする。2019年度の研究では、装置壁面のナノ粒子コーティングによる微生物の付着抑制について検討を行い、以下の結論を得た。 ステンレス(SUS)基板表面を親水性チタニア粒子で表面加工した基板を作製し、乳酸菌をモデル細胞として付着実験を行った結果、未処理のSUS基板に341 cells/imageが付着していたのに対して、SUS表面をナノ粒子処理した基板では11 cells/imageと菌体付着が抑制されていることが分かった。また、乳酸菌が基板に付着したときの表面自由エネルギー変化を算出したところ、未処理のSUS基板は-8.1 mJ/m2と負であるのに対して、処理基板では14.3 mJ/m2と正であったことから、乳酸菌のSUS基板への付着が熱力学的に抑制されていることが示唆された。さらに、原子間力顕微鏡を用いて乳酸菌-SUS基板間に働く付着力を測定した結果、未処理基板は0.76 nNであったのに対して、処理基板では0.28 nNに減少し、乳酸菌とSUS基板間には付着力がほとんど作用していないことが分かった。以上より、SUS基板表面に微生物は付着し易いが、その表面を親水性ナノ粒子で処理すると、微生物の付着が抑制できることが分かった。しかし、微生物の付着を完全に抑制することは困難であるため、外力による除去や薬剤による殺菌なども必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プラントの配管等で広く用いられているステンレス表面を親水性チタニア粒子で表面加工した基板を作製し、表面処理の有無が微生物の付着に及ぼす影響について検討したところ、壁面を親水性のナノ粒子でコーティングすることにより微生物付着を抑制できることを明らかにした。また、原子間力顕微鏡を用いた微生物に働く付着力の直接測定より、表面処理により微生物と基板の付着力が減少していることも実証した。以上より、本研究は、おおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は以下の通りである。 1)マイクロバブル発生装置を用いて、壁面に付着した微生物除去に効果的な諸条件についてバッチ試験によりスクリーニングする。 2)平行平板流れ場システムを用いて、バブルの付着と微生物の脱離過程をin situ観察し、バブルによる微生物の除去について定量的に評価する。 3)原子間力顕微鏡を用いて、微生物-マイクロバブル、微生物-基板間に働く付着力の直接測定を詳細に行う。 4)除去困難な付着微生物への薬剤を封入した生分解性キャリア粒子の選択的送達による付着微生物のピンポイント殺菌について検討する。
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