研究課題/領域番号 |
19H02503
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
向井 紳 北海道大学, 工学研究院, 教授 (70243045)
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研究分担者 |
岩村 振一郎 北海道大学, 工学研究院, 助教 (10706873)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 反応・分離工学 / 触媒・化学プロセス / ナノ材料 |
研究実績の概要 |
本研究はμmサイズの流路が精密に導入された機能性多孔質モノリス体の設計法構築を目的に実施している。まずは作製が困難であった数十μm~数百μmの流路サイズを有するモノリス体を効率良く製造可能な方法の確立を目指している。具体的には熱分解により除去が容易な熱可塑性樹脂でネガ体を作製し、これを用いてゾル-ゲル法によりポジ体となるモノリス体を作製している。昨年度はネガ体に直状繊維を配向させたものを利用したが、本年度は3Dプリンターを用いてネガ体を作製し、これを用いてより精密なモノリス体の製造を試みた。 まずは市販のインクを利用し、ネガ体の作製を行った。続いてレゾルシノール-ホルムアルデヒドゲルをネガ体の空隙に形成し、高温の不活性雰囲気下で炭素化することでゲルをカーボンゲルに変換するとともにネガ体の分解除去を試みた。しかしインク由来の残留物が多く、得られるモノリス体の流路の多くがこれによって閉塞されることが分かった。そこで熱分解後の残留物が少なくなるようにモノマー、光重合開始剤、光吸収剤を吟味して新たにインクを調製した。このインクでプリントされたネガ体を用いることで閉塞の無い百μmオーダーの直状流路が精密に導入されたモノリス体の製造に成功した。得られたモノリス体を流通式吸着試験に用いたところ、期待していたように応答が速く、流体に対する抵抗が低いことが確認できた。 一方で透明の市販インクを用い、コールドモデルとして利用可能な透明なモノリス体を直接プリントすることにも成功した。得られたモノリス体は、内部の流路が直接観察でき、気液二相流れを導入した際に、複雑な流れを容易に捉えることができることが分かった。このモノリス体を使って得られた知見を用い、今後モノリス体の機能向上を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
市販のインクが利用できないという想定外の状況からのスタートとなったが、結果的にネガ体作製により適切なインクの合成に成功しただけでなく、プリント体の精度を向上させるための因子も把握することができた。得られたインクを利用することで、当初予定していた研究項目を実施することができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで専ら円柱形の流路をモノリス体に導入してきたが、3Dプリンターを利用することで様々な形状の流路をモノリス体に導入することが可能となった。モノリス体に導入する流路の形状はその性能に大きく影響を及ぼす。例えばモノリス体の流路断面形状を矩形にし、その縦と横の比を変化させれば流路の表面積/容積比が変わるため、モノリス体の気液固触媒三相反応、光触媒反応でのパフォーマンスが大きく変わると予想される。また光触媒反応では、テーパー形にしたモノリス体の有するモノリス体が有効であると考えられる。そこで3Dプリンターを利用し、より複雑な形状の流路が導入されたモノリス体の作製を目指す。得られた一連のモノリス体を用い、気液固三相反応、光触媒反応等の用途においてモノリス体が最大のパフォーマンスを発揮できるように形状の最適化についても検討をする。
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